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演劇におけるセグメントシナリオとは?

舞台・演劇の分野におけるセグメントシナリオ(せぐめんとしなりお、Segment Scenario、Scenario segmente)は、全体の脚本構造をいくつかの独立性のある「セグメント(断片、区切り)」に分割し、それぞれが部分的な物語として機能するように構成された台本形式のことを指します。

従来の演劇脚本では、物語が一貫して時系列的または論理的に展開されることが多い一方で、セグメントシナリオでは、それぞれのセグメントがひとつのシーンとして独立した意味を持ちつつ、全体としてテーマや世界観を共有することで、一種のモザイク的な物語を成立させます。

この手法は、短編形式の演目やオムニバス形式の演劇においてよく用いられ、観客に多面的な視点を提供するとともに、演出上の自由度を高める効果があります。また、演出家や脚本家が構造的に意図を込めやすいという点でも注目されています。

セグメントは必ずしも時系列に従う必要はなく、時間軸を飛び越えたり、異なる登場人物の視点を切り替えたりすることで、観客の思考を喚起する構成が可能です。このような構成は特に、実験的な演劇作品や現代演劇に多く見られます。

また、現代ではデジタルシアターや配信型の演劇にも応用されており、各セグメントを個別に再編集・視聴可能な形式として展開することで、物語体験の再構成を試みるケースも増えています。

このように、舞台・演劇におけるセグメントシナリオは、物語構成の柔軟性と演出の多様性を高める手法として、演劇制作における革新的な要素の一つとなっております。



セグメントシナリオの成り立ちと歴史

演劇におけるセグメントシナリオの起源は、20世紀初頭の前衛演劇や詩的演劇にまで遡ることができます。特にドイツのベルリンやフランスのパリでは、構造的実験を行う劇作家たちによって「断片化された劇構造」が探求されていました。

たとえばベルトルト・ブレヒトの「叙事演劇」では、観客の情緒的な同一化を避けるため、意図的に物語を分断し、シーンごとのメッセージ性を強調する構成が用いられました。これはまさにセグメントシナリオの原型といえます。

その後、1960?70年代にかけて、アングラ演劇や実験演劇の隆盛期において、より自由なシナリオ構造としてセグメント型が浸透しました。日本では寺山修司や唐十郎といった前衛演劇の旗手が、断片的なシーンで構成される演出を積極的に取り入れ、観客の解釈にゆだねる演劇表現を確立しました。

この手法は、物語の一貫性よりも観客の主観的体験や思想の提示を重視するスタイルに適しており、アート志向の強い作品で今なお用いられています。



構造と演出における特性

セグメントシナリオは、その名の通り脚本が「セグメント(断片)」に分割されており、各セグメントが独立した意味や主題を持ちます。そのため、演出家は各セグメントを異なる舞台美術・照明・音楽で演出することができ、場面ごとに大胆な演出の変化をつけることが可能です。

また、観客にとっても、場面の変化ごとに視点が切り替わることで、物語を一方向からではなく、多層的に捉える経験が提供されます。これにより、作品の解釈はより開かれたものとなり、観客の思考を刺激する効果が期待されます。

セグメント同士はテーマ的に関連していることもあれば、意図的にまったく異なるトーンや時代背景を持たせることもあります。これによって、対比や反復、暗示などの技法が効果的に用いられ、観客に深い印象を与える構造が生まれます。

演出面では、各セグメントをバラバラに稽古・撮影できる利点もあるため、コロナ禍以降の映像演劇やリモート公演にも対応しやすいスタイルとして注目されています。



現代演劇における応用と展望

今日では、セグメントシナリオは形式を問わず幅広く活用されており、特に以下のような形式で用いられることが増えています。

  • オムニバス劇(複数の短編を一つにまとめた構成)
  • 群像劇(複数の主人公を描く演劇)
  • コラージュ演劇(詩や引用、映像などを組み合わせた演出)
  • 即興劇・ワークショップ型演劇(複数の即興的セグメントから構成)

特に2.5次元ミュージカルや実験的演劇プロジェクトでは、セグメントごとに舞台転換があり、それぞれのシーンに異なる演出美学が込められる傾向にあります。また、配信型演劇では、セグメント単位で視聴者が再生順を選ぶインタラクティブな仕掛けも登場しています。

加えて、AIや生成技術の発展により、脚本の一部をリアルタイムで生成・挿入する試みも始まっており、今後は動的セグメントとしての可能性も開かれています。

このように、セグメントシナリオは演劇の創作方法や観劇体験を根本から変革する力を持ち、今後も演劇表現の自由を広げるための基盤となることでしょう。



まとめ

セグメントシナリオは、演劇において物語の多層性と演出の自由度を同時に実現できる、現代的かつ革新的な脚本形式です。

歴史的には前衛演劇の潮流から派生し、現在ではデジタル配信やAI応用などの新技術と組み合わさることで、さらに進化を続けています。観客の思考と感性を刺激するこの手法は、今後の舞台表現の中核のひとつとして位置づけられていくでしょう。

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