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演劇におけるセッションとは?

舞台・演劇の分野におけるセッション(せっしょん、Session、Session)とは、演者や演出家、スタッフ同士が特定の目的をもって行う即興的あるいは計画的な共同作業、主に稽古や創作過程における試行的なやり取りを指す用語です。

もともとこの言葉は、英語で「集まり」「会合」「作業時間」などを意味し、音楽や心理療法、会議など様々な分野で使われています。舞台芸術においては、演出家と俳優が台本や即興をもとに演技を試行し、感情や表現の方向性を探るための場を意味する場合が多く、セッションは作品の完成度を高めるための重要なクリエイティブプロセスとされています。

演劇的なセッションは必ずしも台本の通りに進むわけではなく、身体表現や声、動き、即興などを用いて「可能性を探る」作業が特徴です。このため、参加者の能動性や柔軟な思考が求められ、結果として作品の新たな解釈や演出案が生まれるきっかけとなることが少なくありません。

また、ワークショップや演劇教育の現場でも、「セッション形式」での指導が一般的となっており、これは演技技術だけでなく、集団創作力やコミュニケーション能力を育む手段としても重視されています。

現代では、オンライン演劇や国際共同制作など、リモートでのセッションも一般化し、演劇の国境や形式を越えた創造の可能性を広げています。このように、セッションは、演劇制作の現場における創造性の源泉であり、表現の自由を支える手法としてますます注目されています。



セッションの歴史と語源的背景

「セッション」という語は、ラテン語の「sessio(座ること)」に起源を持ち、そこから派生して英語の「session」となり、会合・議会・授業・録音など、多様な意味で使用されるようになりました。舞台芸術への応用は比較的新しく、20世紀の後半、特に1960?70年代に広がりを見せます。

この時期、従来の固定化された演出や台本中心主義に対して、即興性や創造性を重視する前衛演劇運動が欧米を中心に発展し、その中で演劇における「セッション」の概念が形成されました。

たとえばピーター・ブルックやジャック・ルコックなどの演出家は、俳優の身体性や空間との関係性を探るための試行錯誤の場としてセッションを位置づけ、日常の稽古とは異なる実験的な場を設けました。

日本では、1980年代以降、蜷川幸雄や野田秀樹らが、俳優の身体と即興を重視した演出スタイルの中でセッション的手法を多く取り入れ、創作の初期段階から俳優と共同で世界観を構築していくプロセスを重視する風潮が広まりました。

このように、セッションは、固定化された演劇制作の枠を取り払い、より即興的・協働的な創作スタイルを可能にする手段として現代演劇に深く根付いてきました。



セッションの種類と特徴

舞台・演劇におけるセッションは、その目的や場面に応じてさまざまな形式で行われます。主に以下のような種類が存在します:

  • 創作セッション:脚本が未完成の段階で、俳優や演出家がテーマやキャラクター性を探るために行う試行的なやりとり。
  • 演技セッション:完成済みの台本をもとに、シーンごとの解釈を深めたり、異なる演技プランを比較するための稽古。
  • 即興セッション:台本を使わずに俳優同士の即興演技によって新たな展開を探る創作形式。
  • ワークショップ・セッション:教育的目的で、演技技法や身体表現を習得するために行われる形式。

これらはいずれも、参加者が「試す」「感じる」「発見する」ことを目的とした能動的な場であり、単なる指示と従属の関係ではなく、双方向の創作コミュニケーションが求められる点が特徴です。

また、音楽やダンス、ビジュアルアートとのコラボレーションの場としてのセッションも増えており、異なる表現分野のアーティストが互いに刺激を与え合うハイブリッドな創作の現場が生まれています。



セッションの現代的展開と可能性

近年では、デジタル技術や国際交流の発展により、セッションの在り方も大きく進化しています。

特にパンデミック以降は、Zoomやオンライン演劇プラットフォームを活用したリモート・セッションが急増し、地理的制約を越えた共同創作が可能となりました。異なる国・言語・文化背景を持つ演劇人が、同じ作品づくりに携わるケースも増えています。

さらに、AI技術やリアルタイム映像合成などを用いたテクノロジーセッションも実験的に行われており、これは演出の拡張や俳優の新たな演技様式を模索する舞台として注目を集めています。

また、近年の演劇教育では、セッション形式の稽古が主流となっており、学生や新人俳優が演技の幅を広げるためにセッションを通じてさまざまな技法を体得しています。これにより、現場での即応力や柔軟性を備えた俳優の育成にもつながっています。

今後は、VR・AR技術を組み合わせた仮想空間内でのセッションも現実のものとなり、より没入型かつ拡張的な創作スタイルが定着する可能性があります。



まとめ

セッションは、舞台・演劇における創作の基盤であり、即興性と協働性を兼ね備えた柔軟な表現手法です。

歴史的には前衛演劇の潮流の中で生まれ、現在では教育、演出、国際共同制作、デジタル応用といった多岐にわたる分野で活用されています。

今後も、セッションは舞台芸術の自由と創造性を支える中心的な存在として進化を続け、多様な表現と出会いを促進する土台となっていくでしょう。

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