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美術におけるアートアニメーションとは?

美術の分野におけるアートアニメーション(あーとあにめーしょん、Art Animation、Animation d'art)は、商業的なアニメーションとは異なり、芸術的な表現を重視した映像作品の総称です。個人のアーティストや小規模なスタジオによって制作されることが多く、実験的な手法や独自の世界観を反映した作品が特徴です。



アートアニメーションの歴史と発展

アートアニメーションの起源は、20世紀初頭のサイレント映画時代に遡ります。初期のアニメーション作家たちは、絵画や彫刻といった美術的な要素を映像に取り入れ、独自の表現を追求しました。

1920年代には、ドイツ表現主義やロシア・アバンギャルドの影響を受けた実験的なアニメーションが登場し、1930年代にはウォルト・ディズニーによる商業アニメーションが台頭する一方で、ヨーロッパやソビエト連邦では個人作家によるアートアニメーションが制作されました。

1960年代から1970年代にかけて、ノーマン・マクラレンやヤン・シュヴァンクマイエルといった作家が活躍し、コマ撮りアニメーションや抽象的な映像表現を確立しました。日本では、手塚治虫が「ジャンピング」や「展覧会の絵」などの実験的な短編アニメーションを制作し、アートアニメーションの可能性を広げました。



アートアニメーションの技法と特徴

アートアニメーションは、商業アニメーションとは異なり、個性的な技法や表現が多用されます。代表的な技法には以下のようなものがあります。

ストップモーション – 人形や粘土、カットアウトした紙のキャラクターを少しずつ動かしながら撮影する技法。ヤン・シュヴァンクマイエルやクエイ兄弟がこの手法を駆使しています。

抽象アニメーション – 幾何学模様や色彩の変化をリズムに乗せて動かす表現。オスカー・フィッシンガーやノーマン・マクラレンの作品が有名です。

手描きアニメーション – フレームごとに異なるタッチの絵を描き、独自の質感や動きを生み出す手法。近年ではデジタル技術と組み合わせた作品も多くなっています。

こうした技法は、作家の個性やメッセージを直接伝えるために用いられ、映像の中に独自の美学を形成しています。



現代におけるアートアニメーションの意義

近年、アートアニメーションは、映画祭やオンラインプラットフォームを通じて世界的に注目を集めています。特に、アヌシー国際アニメーション映画祭オタワ国際アニメーション映画祭などでは、実験的な短編アニメーションが多く発表されています。

また、デジタル技術の発展により、VRアニメーションやインタラクティブアニメーションといった新たな表現も登場しており、アートアニメーションの可能性はさらに広がっています。



まとめ

アートアニメーションは、商業アニメーションとは異なる芸術的な映像表現として、多様なスタイルや技法が発展してきました。

映像と美術の融合により、作家の個性や思想を反映した作品が生まれ、今後も新たな技術とともに進化し続けるでしょう。アートアニメーションは、美術と映像表現の可能性を広げる重要なジャンルとして、今後も注目され続けるに違いありません。


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