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美術におけるコリント式とは?

美術の分野におけるコリント式(こりんとしき、Corinthian order、Ordre corinthien)は、古代ギリシア建築における三大オーダーの一つで、装飾性に富んだ柱頭(キャピタル)を特徴とする建築様式です。アカンサスの葉をあしらった華麗な意匠が特徴で、彫刻や美術作品にも多大な影響を与えてきました。



コリント式の起源と歴史的背景

コリント式は、古代ギリシアの建築におけるドーリア式、イオニア式に続く第三のオーダーとして位置づけられます。起源は紀元前5世紀後半とされ、最初期の例としてはアテネのリュシクラテス記念碑(紀元前334年頃)が挙げられます。ローマ時代に入るとその華やかさから特に重用され、神殿、公共建築、凱旋門などに広く採用されました。

この様式は、ギリシアにおいては比較的稀な存在でしたが、ローマ建築では最も好まれたオーダーとなり、ルネサンス以降のヨーロッパ建築にも大きな影響を与えました。アカンサスの葉を模した装飾は、美術作品や工芸品の装飾モチーフとしても定着し、西洋美術全般に波及する視覚的語彙の一つとなっています。

そのため、建築史における象徴的様式であると同時に、美術的にも「秩序と装飾性の融合」を体現する意匠として、後世に多くの模倣と再解釈をもたらしてきました。



デザインの特徴と装飾性

コリント式の最大の特徴は、アカンサスの葉をモチーフにした柱頭装飾にあります。柱のシャフト(胴部)は通常フルーティング(縦溝)が施され、柱頭は繊細かつ立体的な彫刻によって、自然の葉が螺旋状に巻き上がるような構造を成しています。

この意匠は、単なる装飾にとどまらず、自然の造形美と人工の秩序を融合させた美学として高く評価されてきました。アカンサスは地中海沿岸に自生する植物で、古代ギリシア人にとっては豊穣や生命力の象徴でもあり、その葉を建築装飾に取り入れることで、自然との調和や神聖さを表現したと考えられます。

柱頭上部にはヴォリュート(渦巻き模様)が内向きに巻き込まれ、幾何学的な整合性と流動的な曲線が共存する構造がとられています。このような高度な造形性と緻密なバランスは、彫刻的観点から見ても極めて洗練されたデザインといえるでしょう。



美術・彫刻作品への応用と象徴性

コリント式は建築の枠を越えて、美術や工芸の分野にも影響を与えてきました。たとえば、額縁、家具、陶器、金属器、宗教建築の祭壇や柱装飾などにその意匠が引用され、装飾の華やかさや象徴的意味を強調するために用いられています。

また、ルネサンス以降の絵画においても、背景の建築物にコリント式の柱が描かれることで、理想化された空間構成や古典性の強調がなされました。特に新古典主義やアカデミズムの文脈においては、コリント式が「美の象徴」「知性の秩序」「権威の表徴」として多用される傾向が強まります。

こうした流れは、建築美術の要素が視覚芸術に取り込まれる事例の好例であり、空間と装飾の一体的把握という美術思想の実践としても重要な意味を持っています。



現代における再評価と文化的継承

近代以降、モダニズム建築ではコリント式のような装飾的要素はしばしば否定されましたが、ポストモダン以降には装飾や引用の価値が再評価され、歴史的様式の一部としてコリント式も再登場しています。現代建築におけるアイロニーや演出の一環として、古典様式の柱が意図的に取り入れられる例も見られます。

また、美術教育やデザイン分野では、オーダーの理解と描写能力を育むための基礎教材として、コリント式は今なお重要な対象です。デザイン的観点から見ても、その構成美や植物モチーフの活用方法は、パターンデザインや彫刻表現において示唆に富んでいます。

このように、コリント式は単なる古典建築のスタイルにとどまらず、装飾、象徴、造形の原理として現代の美術文化にも脈々と受け継がれているのです。



まとめ

コリント式は、アカンサスの葉を基調とする華麗な装飾を特徴とした古典建築様式であり、美術・彫刻・デザインにおいても多大な影響を与えてきた造形原理の一つです。

その象徴性と構成美は、時代を超えて視覚表現に生き続けており、芸術的想像力の源泉として今なお輝きを放っています。


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