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美術におけるジェッソとは?

美術の分野におけるジェッソ(じぇっそ、Gesso、Gesso)は、絵画の下地材として使用される白色の塗料の一種で、キャンバスや木板などの支持体に塗布することで表面を平滑に整え、絵具の定着性を高める役割を果たします。古くはイタリアのテンペラ画やフレスコ画にも用いられ、現代でもアクリル画や油彩画の基礎工程として広く活用されています。



ジェッソの歴史と語源

ジェッソという言葉は、イタリア語で「石膏(Plaster)」を意味する語に由来し、15世紀のルネサンス期のイタリアにおいて広く使用されていました。当時のジェッソは、動物性の膠(にかわ)石膏粉末を混ぜて作られており、木製パネルに塗布することで、テンペラ画や金箔装飾のための滑らかな下地が得られるものでした。

この技法はフレスコ画などの宗教美術にも応用され、特にシエナ派やフィレンツェ派の画家たちは、作品の完成度を高めるために緻密な下地処理を行っていました。フランス語でも同様に「Gesso」と表記され、美術用語として国際的に通用する名称となっています。

19世紀以降、キャンバスの普及とともにジェッソはますます重要な役割を持つようになり、20世紀には合成樹脂を用いたアクリルジェッソが登場。従来の石膏ベースのジェッソよりも乾燥が早く、扱いやすいことから現代美術において標準的な素材となりました。



ジェッソの主な成分と役割

現代のジェッソは、白色顔料(主にチタニウムホワイト)炭酸カルシウムなどの充填剤、そしてアクリルポリマー乳液を主成分としています。これにより、速乾性と柔軟性を併せ持ち、さまざまな素材に対応できる製品が開発されています。

ジェッソの最大の目的は、支持体の表面を保護し、絵具の吸収を調整することにあります。たとえば、未処理のキャンバスに直接油絵具を塗布すると、布地が劣化したり絵具が染み込んで発色が損なわれる可能性がありますが、ジェッソを塗ることでそれらを防ぐことができます。

また、アクリル画や油彩画に限らず、鉛筆、木炭、パステルなどのドライメディアの下地としても活用され、画面上での筆運びを滑らかにし、表現の幅を広げてくれます。

製品によっては着色されたカラージェッソも存在し、黒、グレー、セピアなどを使うことで画面全体のトーンを調整したり、特定の効果を狙った演出が可能です。



現代における使い方と応用技法

現在、ジェッソは市販のチューブやボトルで簡単に手に入るため、プロのアーティストから初心者まで幅広く利用されています。一般的な使用法としては、平筆やローラーで均一に塗布し、乾燥後にサンドペーパーで磨いて滑らかな下地を作る工程が基本となります。

また、アクリルジェッソは乾燥後も柔軟性があるため、布や紙、木材、プラスチック、金属といった多様な支持体に使用することができ、実験的な表現にも対応可能です。特に現代アートでは、テクスチャーを活かした厚塗りや、ジェッソを盛り上げて立体的な下地を形成するといった応用も行われています。

さらに、コラージュやミクストメディア作品の下地にも適しており、画材を問わず創作の自由度を高める存在です。作品の耐久性を高め、意図した色味を正確に出すための重要な基盤として、ジェッソは今後も美術表現において欠かせない素材であり続けるでしょう。



まとめ

ジェッソは、美術における下地処理材として古くから使われてきた伝統的かつ実用的な素材です。その役割は単なる準備作業にとどまらず、作品の完成度を左右する重要な工程でもあります。

時代とともにその成分や使用方法も進化し、今日では絵画だけでなく幅広いメディアに対応する素材として再評価されています。創作の第一歩として、ジェッソの性質を理解し、適切に活用することは、あらゆる美術表現において大きな意味を持つのです。


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