【ジッグラトとは？】ビジプリ美術用語辞典

美術におけるジッグラトとは？

美術の分野におけるジッグラト（じっぐらと、Ziggurat、Ziggourat）は、古代メソポタミアの階段状神殿を起源とする建築様式やその象徴性をモチーフにした造形表現のことです。幾何学的で積層的なフォルムは、現代アートにおいても思想的・視覚的な構成要素として広く活用されています。

古代建築としてのジッグラト

ジッグラトとは、紀元前3000年ごろから古代メソポタミアで築かれていた神殿建築で、高さの異なる複数の階層を積み重ねたピラミッド型の構造が特徴です。シュメール人をはじめとする古代民族の宗教施設であり、天と地をつなぐ象徴として高台に設けられていました。

建材には日干しレンガや焼成レンガが用いられ、上層に神殿を配置する構造を持ちます。これにより神聖さを可視化する役割を担っていたとされ、代表的な遺構としてはウルのジッグラトが有名です。こうした建築は当時の技術力だけでなく、信仰や思想も表しています。

ジッグラトの美術的引用と再解釈

近現代の美術においては、構造美そのものが造形モチーフとして注目されるようになりました。階層的な構成や反復的なフォルムは、モダンアートやミニマルアート、インスタレーションの中で取り入れられることがあります。

たとえば、ドナルド・ジャッドのように直線的で層をなす彫刻作品を制作する作家や、ランドアートで自然と人工の関係性を探る作家たちは、ジッグラトに見られる構造美や精神性を独自に昇華しています。そこには、高さや積層がもたらす象徴性を視覚的に伝える力があると考えられています。

ジッグラトの象徴性とコンセプト

ジッグラトの構造には宗教的・象徴的意味合いが含まれており、美術における引用においてもその象徴性が重要視されます。階段状に上昇する形は、人間の精神的成長や宇宙との接点といったテーマと結びつけられることが多いです。

また、段階的に積み上げられる形は「記憶の層」や「時間の積層」といったコンセプトの視覚化にも利用され、詩的なイメージを想起させる要素としてアーティストに活用されています。このように、抽象性と具体性を両立させるモチーフとして再評価されています。

現代美術とジッグラトの応用

ジッグラトは現在、建築、彫刻、ランドアートなど複数のジャンルにおいて応用されています。たとえば都市設計における階段状の建築物や、美術館の展示デザインにおける構造的コンセプトとしても利用されることがあります。

また、教育分野では「Ziggurat Model」と呼ばれる段階的支援モデルが使われるなど、その概念は芸術以外にも波及しています。現代美術の中では、構造そのものの美しさだけでなく、それが内包する哲学的・象徴的意味が重視されるようになっており、ジッグラトは単なるモチーフを超えた価値を持つ存在となっています。