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美術におけるシンセティックアートとは?

美術の分野におけるシンセティックアート(しんせてぃっくあーと、Synthetic Art、Art Synthétique)は、人工的な素材や手法を用いて創作される芸術作品の総称です。自然素材に頼らず、人為的な構成によって表現される点に特徴があり、20世紀以降の現代アートで多く取り入れられています。



人工素材を中心とした造形:シンセティックアートの基本を知る

シンセティックアートとは、自然から採取された素材ではなく、化学的・工業的に作られた人工素材を主に用いるアートのことです。プラスチックや合成繊維、樹脂、アクリル、工業塗料などが代表的な使用素材であり、視覚効果の追求や鮮やかな発色、高い加工自由度などの理由から注目されています。

このアートスタイルは、20世紀の抽象美術やポップアート、ミニマルアートなどと深く関係しており、「素材の個性」を強調する表現として機能しています。自然な風合いや偶然性よりも、コントロールされた造形美が求められる傾向が強いです。

視覚的な均質さや、素材そのものの質感を魅力とする表現が多く、現代デザインや建築、美術館展示空間とも親和性が高くなっています。



シンセティックアートの発展と現代的な応用:ポップカルチャーとの結びつき

このジャンルの起源は、1910年代のキュビスム運動に見られる「シンセティック・キュビスム(構成的キュビスム)」にさかのぼりますが、より広く認知されるようになったのは1960年代のポップアートの台頭からです。

特にアンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインのような作家たちは、人工的な色彩や印刷技術、工業製品的な仕上がりを積極的に取り入れ、量産的な美意識を逆手に取った表現を行いました。このような感覚が、後に「シンセティックアート」として体系化されていきました。

また、近年ではデジタルアートや3Dプリンティングによって表現される作品も、人工的な素材やプロセスを用いるという意味で、シンセティックアートの一部と位置づけられます。



素材の選択と美術の哲学:自然性からの脱却という思想

シンセティックアートは、「自然から距離をとることで、逆に人間の意志や構造性を強調する」という思想に基づくことが多いです。木や石、布などの有機素材ではなく、人工的に作られたマテリアルを選ぶことで、「偶然性」や「天然らしさ」から解放された表現が可能になります。

そのため、このジャンルでは色彩や質感が均質であること、構造が明快であること、加工の自由度が高いことが評価されます。たとえば、工場で製造された板材やアクリル板、樹脂塗料などが使われるケースがよく見られます。

これは、「人工=偽物」と見る価値観に対する挑戦でもあり、合成素材の美的価値を積極的に打ち出す表現方法でもあるのです。



デザインとの連動と今後の展望:未来志向の表現を支える技術

シンセティックアートは、現代においてデザインや建築、工業製品との親和性が極めて高いジャンルとなっています。インテリアやインスタレーション、都市空間でのパブリックアートなどにおいて、その特性が積極的に活かされています。

さらに、テクノロジーの進化により、光沢や透明感、質量の操作、耐久性など、表現の可能性も拡張されています。たとえばLEDとの組み合わせや、音・動きとの統合によって、視覚を超えた多感覚的な作品が増えています。

環境問題への配慮やリサイクル素材の活用も、今後の展望として見逃せません。合成素材を用いながら、サステナブルな視点とどのように融合していくかが、今後のテーマとなっていくでしょう。



まとめ

シンセティックアートは、人工的な素材と造形美を融合させ、現代的かつ未来志向の美術表現を実現するジャンルです。視覚効果や機能性、そしてメッセージ性のバランスを取りながら、これからのアートシーンにおいて重要な役割を担っていくことが期待されています。


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