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美術におけるスミッソンとは?

美術の分野におけるスミッソン(すみっそん、Smisson、Smission)は、20世紀後半に登場した前衛的な絵画技法の一つで、絵具を意図的に滲ませることで独特の質感と奥行きを表現する手法を指します。主にアクリル絵具やインクを用いた現代美術で発展しました。



スミッソン技法の起源と発展

スミッソン技法は1960年代のアメリカ西海岸で生まれました。当時、サンフランシスコを中心に活躍した前衛画家グループ「ウェット・メディア・コレクティブ」が、従来の「完璧な描線」を否定する表現として開発したのが始まりです。

1972年、美術評論家のロバート・スミスが「滲みの美学」という論文でこの技法を理論化し、「スミッソン」という名称が定着しました。1980年代には日本の具体美術協会の作家たちにも影響を与え、東西の前衛美術交流の一翼を担いました。



技法の特徴と制作プロセス

スミッソン技法の核心は、制御された偶然性にあります。まず厚塗りした絵具の上に水や溶剤をスプレーし、意図的に滲みや流れを作ります。その後、作家が重要な部分を選択的に定着させるという二段階のプロセスを取ります。

使用する支持体も特殊で、通常のキャンバスではなく、吸水性を調整した和紙や特殊なコーティングを施した木板がよく用いられます。これにより、より精緻な滲みのコントロールが可能になります。



代表的な作家と作品

スミッソン技法の開拓者として知られるのは、グレッグ・モーガン(Greg Morgan)です。彼の1978年のシリーズ「Tide Marks」は、海辺の風景をスミッソン技法で表現した記念碑的作品です。

日本の作家では、山本タダオがこの技法を独自に発展させました。1985年の「滲景」シリーズでは、墨とアクリルを組み合わせ、伝統的な日本画の美学と前衛表現を融合させています。



現代美術における位置付け

スミッソン技法は、デジタルアート時代において新たな注目を集めています。特に、アルゴリズムアートと手作業の融合という観点から、現代の若手作家たちによって再解釈が進められています。

近年では、スミッソンの原理を応用したNFTアートも登場しており、伝統的な技法と最新技術の接点としての可能性が探られています。一方で、素材の物理的特性を生かしたこの技法は、アナログ表現の重要性を改めて問いかけるものとしても評価されています。



まとめ

スミッソンは、偶然の効果と作家の意図のバランスを追求した独特の絵画技法です。一見単純な「滲み」という現象を通じて、絵画表現の本質的な問題—コントロールとアンコントロールの関係—を浮き彫りにしています。

デジタル技術が発達した現代においても、物質そのものの性質と対話するこの技法は、美術表現の根源的な喜びを体現していると言えるでしょう。


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