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美術におけるタペストリーとは?

美術におけるタペストリー

美術の分野におけるタペストリー(たぺすとりー、Tapestry、Tapisserie)は、織物技術を用いて制作される壁掛け式の装飾美術品を指します。専門的には「経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交差させて模様を織り出す繊維芸術」と定義され、簡単に言えば「織物で作られた大きな絵画」のような存在です。中世ヨーロッパで発展したこの芸術形式は、建築と一体となった総合芸術として、また「動く美術館」とも称されるほど貴重な文化財として重要な役割を果たしてきました。



タペストリーの定義と基本特性

タペストリーは厳密には「綴織(つづれおり)技法で制作された大型の装飾用織物」を指します。専門的には、絵画的表現を経糸と緯糸の交差で再現する繊維芸術ですが、もっとわかりやすく説明すると「糸で描く巨大な絵」と言えるでしょう。

その特徴として、裏表同じ図柄が現れること、経糸を完全に覆う緯糸の密度の高さ、そして通常は壁面に掛けるためのループや吊り紐が付属していることが挙げられます。一般的な布地と異なり、タペストリーは一枚の「作品」として独立した存在価値を持っています。


タペストリー印刷のサービス詳細
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美術館やホテルの装飾から家庭用インテリアまで、高品質なタペストリーを制作。豊富な生地と精巧な印刷技術で、芸術作品のような美しさを再現します。


歴史的発展と文化的背景

タペストリーの起源は古代エジプトにまで遡りますが、本格的に芸術形式として確立したのは14世紀のフランスとフランドル地方でした。当時のタペストリーには、石造建築の防寒という実用的な役割と、権力誇示という社会的な機能の両面がありました。

特にブルゴーニュ公国の宮廷では、移動可能な美術品として重用され、「貴婦人と一角獣」のような傑作が生まれました。ルネサンス期には絵画的表現が追求され、バロック時代には建築空間と一体化した装飾芸術として発展しました。



制作技法と材料の進化

伝統的なタペストリー制作では、まず「カルトン」と呼ばれる原寸大の下絵が作成されます。専門用語で言えば「横糸(緯糸)で経糸を完全に覆い隠す綴織技法」を用いますが、簡単に言えば「縦糸の上に横糸をびっしりと織り込んで絵を描いていく」作業です。

材料面では、中世では羊毛が主流でしたが、時代と共に絹や金銀糸、現代では化学繊維も使用されます。特に印象的なのは、1cm²あたりに数十本もの色違いの糸を使い分けることで、油絵のような豊かな色彩表現を可能にしている点です。



現代における展開と多様化

20世紀以降、タペストリーは「繊維芸術(ファイバーアート)」として新たな展開を見せています。伝統的な定義を超え、現代美術の一表現形式として、立体造形やインスタレーション要素を取り入れた作品も登場しています。

代表的な例として、フランスのジャン・リュルサやスペインのアントニ・タピエスらは、伝統技法と現代美術を融合させました。日本では染織家の志村ふくみが自然染料による作品で注目され、タペストリーの可能性をさらに広げています。



まとめ

タペストリーは「織る絵画」とも呼ばれる独特の芸術形式で、専門的には綴織技法による大型装飾織物と定義されますが、一般的には「糸と織りで表現する物語」と理解すると親しみやすいでしょう。

中世の実用性から現代の芸術表現へと変遷を遂げながらも、その本質である手仕事の温かみと豊かな表現力は、デジタル時代においてもますます注目を集めています。


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