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美術におけるテンペラとは?

美術の分野におけるテンペラ(てんぺら、Tempera、Tempera)は、顔料を卵黄や樹脂、または水で溶かして作られる絵具を使用する絵画技法です。中世ヨーロッパやルネサンス時代に広く用いられ、特に教会絵画や板絵に多く見られました。テンペラは速乾性があり、細かいディテールを表現するのに適しています。



テンペラの歴史と発展

テンペラ技法は古代から使用されており、特にヨーロッパの中世やルネサンス時代に盛んに使われました。顔料と卵黄を混ぜて作られるテンペラ絵具は、非常に速乾性が高く、細密な筆使いが可能でした。これにより、細かいディテールを表現することができ、特に宗教画やアイコン、板絵などでその特徴を発揮しました。

ルネサンス時代の巨匠たち、例えばフィリッポ・リッピやサンドロ・ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチなどは、テンペラを使って精緻でリアルな人物像や背景を描きました。しかし、油絵技法が普及するにつれて、テンペラは徐々に使用されなくなり、油絵の技法が主流となっていきました。



テンペラ技法の特徴と技術

テンペラは、顔料を卵黄や水で混ぜて使用します。卵黄を媒介にすることで、絵具は非常に速乾性となり、また硬化することなく長時間保持されます。これにより、細部まで鮮明な表現が可能となり、特に宗教画や肖像画などで求められた精密な表現が可能でした。

また、テンペラは透明度が高く、レイヤーを重ねることで微妙な色合いや光沢感を出すことができます。このため、絵画の深みを与えることができ、油絵技法と似た効果を生み出すことができます。テンペラで描かれた絵画は、特に透明感があり、細かい筆致や光の反射を生き生きと表現する特徴を持っています。



現代におけるテンペラ技法の使用

現代においては、油絵が主流となったため、テンペラ技法の使用は少なくなりました。しかし、いくつかの現代の画家やアーティストたちは、伝統的なテンペラ技法を復活させ、または混合技法として使用しています。テンペラは、その透明感と細密さを求めるアーティストに今もなお支持されています。

現代アートの中でも、テンペラは自然派や歴史的な表現を好む画家たちによって利用されています。特に、手作り感やクラシックな技法を重視する作品において、その特性が活かされることが多いです。テンペラは、絵画の表現方法として再評価されつつあり、現代の技術との融合によって新たな可能性を生み出しています。



テンペラの技法と現代アートへの影響

テンペラ技法は、現代アートにおいても重要な影響を与えています。特に古典的な絵画技法を復活させたアーティストたちは、テンペラを用いて細やかなディテールや質感を追求しています。また、現代では、テンペラの技法を現代的な素材や手法と融合させることも一般的です。

さらに、テンペラはその硬直した乾燥時間や透明感のある仕上がりにより、現代のアートシーンにおいて「手作り感」や「クラフト感」を強調するために使われています。その技法を用いて描かれる作品は、しばしば歴史的、または物語性の強いテーマを持つことが多いです。



まとめ

テンペラは、古典的な絵画技法であり、その透明感と精緻さから、今でも多くのアーティストに愛用されています。油絵技法に取って代わられたものの、その特性は現代アートにおいて再評価されています。

今日でも、多くのアーティストたちはテンペラ技法を用い、自然や歴史をテーマにした作品を制作しています。テンペラは、現代のアートシーンにも深く息づく技法となっています。


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