美術におけるドーリア式とは?
美術の分野におけるドーリア式(どーりあしき、Doric order、ordre dorique)は、古代ギリシャの建築における柱の様式の一つで、簡潔で力強いデザインが特徴です。特に古代ギリシャの神殿建築において広く使用され、後にローマや西洋の建築に多大な影響を与えました。
ドーリア式の基本的な特徴
ドーリア式は、古代ギリシャの建築において最も初期に発展した柱式で、装飾的な要素が少なく、非常にシンプルで力強いデザインが特徴です。ドーリア式の柱は、太くて簡潔な外観を持ち、特に円柱の上部に装飾を施さず、単純なエンタブレチャー(上部構造)と共に用いられました。
その特徴的な構造には、下部が広くて上部に向かって細くなる円柱(シンプルで装飾の少ない)と、上部に付けられる装飾的なキャピタル(柱頭)があり、この部分は非常に簡素で、エンタブレチャーは三層に分かれているのが基本です。
ドーリア式の起源と歴史的背景
ドーリア式は、紀元前7世紀頃、ギリシャのドーリア地方で発展したとされ、後に全ギリシャで広く採用されました。このスタイルは、アテネやスパルタなどの都市国家で建設された神殿や公共建築に見ることができます。
ドーリア式が初めて登場したのは、ドデカポリス(十二の都市)の一部であるドーリア地方の建築物においてです。ギリシャ建築の中でも最も古典的な形式とされ、後に古代ローマやルネサンス期の建築家たちに影響を与えました。
ドーリア式と他の柱式との比較
ドーリア式は、後の柱式であるイオニア式やコリント式と比較して、装飾が少なく、直線的で力強い印象を与えます。イオニア式やコリント式はより細く装飾的であり、エレガントで複雑な要素が特徴ですが、ドーリア式はそのシンプルさゆえに強固な存在感を持っています。
ドーリア式の柱は、上部のキャピタル部分が特に装飾的でなく、シンプルで几帳面なデザインが特徴で、これに対してイオニア式は、渦巻き状の装飾が施され、コリント式はより華麗な装飾が加わります。
ドーリア式建築の現代的な応用
ドーリア式のデザインは、古代ギリシャやローマの建築の中で広く使用され、その後の西洋建築においても影響を与えました。特にルネサンス期の建築家たちは、古代のドーリア式を復興し、多くの建物に採用しました。ローマやアメリカ合衆国の建築でも、この柱式を模倣することで、力強く厳格な美学が表現されました。
現代では、ドーリア式は公共の建物や政府機関の建築において、その堅固で安定感のある印象を与えるために使われることがあります。また、ネオクラシカル建築やデザインにも影響を与え、装飾の少ないシンプルな美を追求する現代の建築においてもその影響は見られます。
まとめ
ドーリア式は、古代ギリシャの建築スタイルの中で最もシンプルで力強いデザインを持ち、後世に多大な影響を与えました。装飾的要素が少なく、シンプルな柱の形状が特徴であり、現在でもその力強さと安定感が高く評価されています。ドーリア式の柱は、今後も多くの建築において、その歴史的な背景とともに尊重され続けるでしょう。