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美術におけるブロックチェーンアートとは?

美術の分野におけるブロックチェーンアート(ぶろっくちぇーんあーと、Blockchain Art、Art de la blockchain)は、ブロックチェーン技術を用いた作品の制作・流通・所有のあり方を含む新たな芸術表現を指します。デジタルデータに信頼性と唯一性を与える技術を背景に、NFTアートとして注目を集め、アートの価値や流通構造そのものを問い直す動きとして広がりを見せています。



技術革新とともに登場した新しい表現領域

ブロックチェーンアートは、2010年代後半に登場した新しい芸術ジャンルであり、仮想通貨の基盤となるブロックチェーン技術の応用から発展しました。美術の分野ではとくに、唯一無二のデジタル資産として作品を認証・取引できる仕組みとして活用され、デジタル作品における「真正性」と「所有権」を担保する手段として注目されました。

この動きは、アートマーケットにおける従来の取引方法に変革をもたらし、デジタルアーティストが中央集権的なギャラリーや代理人を介さずに作品を発表・販売できる可能性を開いた点でも大きな意義を持っています。



語源と技術的な基盤に見る本質

「ブロックチェーン(Blockchain)」は、取引データを暗号化して鎖状に連結する分散型台帳技術を指します。これによりデータの改ざんが極めて困難になり、透明性と信頼性の高い情報管理が可能となります。

美術分野では、フランス語で“Art de la blockchain”と呼ばれ、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)と密接に結びついています。NFTは一つひとつが固有の価値を持つデジタル証明書であり、アート作品に固有のIDを付与し、ブロックチェーン上でその所有や来歴を追跡することができます。



代表的な事例とアーティストたちの取り組み

ブロックチェーンアートを牽引している代表的なアーティストには、Beeple(ビープル)、Pak、Refik Anadolなどが挙げられます。特にBeepleのNFT作品《Everydays: The First 5000 Days》がオークションで約6930万ドルという高額で落札されたことは、世界的に大きな話題となりました。

また、現代のアーティストたちは、NFTを単なる販売手段としてではなく、分散型の創作や観客との新たな関係構築のためのプラットフォームと捉えています。これにより、アートは作品単体ではなく、プロジェクト全体、コミュニティとの協働、スマートコントラクトによる制御まで含めた包括的な表現へと発展しています。



課題と可能性を併せ持つ現代的アートのかたち

ブロックチェーンアートは、所有や流通のあり方を根本から問い直す革新的な表現形式である一方で、環境負荷や著作権の問題など、技術的・倫理的課題も抱えています。特に仮想通貨のマイニングに伴うエネルギー消費は、環境意識の高いアート界でも議論の的となっています。

それでもなお、ブロックチェーン技術を用いたアートは、所有や複製、価値付けといったこれまでの常識に再考を促し、社会とテクノロジー、芸術の交差点として今後も重要なテーマを投げかけ続けると考えられます。



まとめ

ブロックチェーンアートは、技術革新を通じてアートの制作・販売・所有のかたちを大きく変える可能性を秘めた表現形式です。

NFTをはじめとする技術的基盤を活用することで、デジタル時代の「本物性」や「価値」を再定義し、未来のアートの在り方を問う重要な領域となっています。


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