ビジプリ > イベント用語辞典 > か行 > 【クロスオーバーネットワーク】

【クロスオーバーネットワーク】イベント用語辞典


クロスオーバーネットワーク(ふりがな:くろすおーばーねっとわーく/英語:Crossover Network/仏語:Réseau de Crossover)とは、主に音響機器において複数のスピーカーユニットに対し、音域(高音・中音・低音)を分割して適切に振り分ける装置や回路のことを指します。イベント業界では、音響システムの設計やライブイベントでの音質管理に不可欠な技術要素です。


クロスオーバーネットワークの定義と概要

クロスオーバーネットワークは、スピーカーシステムにおいて音の周波数帯域を分割し、それぞれの帯域を適切なスピーカーユニット(ウーファー、ミッドレンジ、ツイーターなど)に振り分けるための回路です。これにより、各ユニットがその特性に最も適した音域だけを再生することが可能になり、より明瞭でバランスの取れたサウンドを実現できます。


たとえば、低音域(20Hz〜250Hz)はウーファーに、中音域(250Hz〜4kHz)はミッドレンジに、高音域(4kHz〜20kHz)はツイーターに送られます。これを可能にするのがクロスオーバーネットワークの役割です。


イベント業界においては、大規模なコンサートやフェス、展示会、セミナーなどで使用されるPA(Public Address)システムにおいて、このネットワークが重要な音響調整機能として活用されます。音の抜けや広がり、クリアさはこのシステムの設計次第で大きく変わるため、音響エンジニアにとって必須の知識と技術です。


クロスオーバーネットワークの歴史と語源

「クロスオーバー(Crossover)」という語は「交差する」「切り替える」という意味を持ち、音響の世界では異なる周波数帯を分ける、という意味で使われるようになりました。この技術自体は1950年代頃から高級オーディオや劇場の音響設備で導入され、やがてライブPAや商業イベントの音響にも普及していきました。


初期のクロスオーバーはパッシブ型(スピーカー内部に内蔵された回路)でしたが、1980年代以降、より高度な音響調整が求められるようになり、外部機器として独立したアクティブ型のクロスオーバーが登場。これにより、周波数の分割だけでなく、レベル調整やディレイ処理も可能となり、イベント会場における音響品質の向上に大きく寄与しました。


現在のイベント業界におけるクロスオーバーネットワークの使われ方

現代のイベント業界では、デジタルミキサーやDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)と連携する形でクロスオーバーネットワークが構築されています。これはすべてがデジタルで制御可能で、会場の広さやスピーカーの配置、反響の特性に応じて、細かく音の分割ポイントや出力バランスを設定することができます。


イベント現場では、事前の音響チェック(サウンドチェック)時に、クロスオーバーポイント(分割周波数)を調整し、観客に最適な音響環境を提供します。特に野外フェスや大ホールなどでは、音の「届き方」や「残響」の管理が重要であり、クロスオーバーネットワークの適切な設計が不可欠です。


クロスオーバーネットワークの今後の展望

音響技術の進化により、AIによる自動チューニング機能を持ったクロスオーバーシステムも登場し始めています。これにより、経験の浅いエンジニアでも高品質な音響設計が可能になるほか、時間短縮や人的ミスの削減にもつながります。


また、5GやIoTと連携したリアルタイム音響調整も視野に入っており、イベント会場でのクロスオーバーネットワークは今後さらにスマート化・自動化が進んでいくと予測されます。


まとめ

クロスオーバーネットワークは、イベントの音響品質を左右する重要な技術です。音域を分割し、それぞれに適したスピーカーへ音を送ることで、明瞭かつ迫力のあるサウンドを実現します。
その起源は1950年代のオーディオシステムにさかのぼり、現在ではデジタル制御が主流です。イベント業界では、プロフェッショナルな音響設計の鍵となる要素であり、今後も技術進化とともにその役割は広がっていくでしょう。


▶イベント用語辞典TOPへ戻る



↑ページの上部へ戻る

ビジプリの印刷商品

ビジプリの関連サービス