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印刷業界における糸かがりとは?

印刷業界における糸かがり(いとかがり、Thread Sewing / Cousure de fil)とは、書籍や冊子製本する際に、折り重ねた印刷用紙を糸で縫い合わせる製本方法を指します。この技法は、製本物の耐久性を高めるために広く用いられ、特に高級書籍や長期間保存が求められる文書に適しています。糸かがりは、ページがばらけることを防ぎ、綴じた部分が強固になるため、開きやすさと耐久性を兼ね備えた製本方法です。


糸かがりの歴史と由来

糸かがりの歴史は、書物の歴史そのものと密接に関連しています。最古の書物製本の形式である巻物から、冊子状の「コデックス」に移行した際に、この技法が発展しました。特に中世ヨーロッパの写本では、羊皮紙を折り重ねて糸で縫い合わせる糸かがり製本が一般的でした。

日本では平安時代に輸入された製本技術をもとに和綴じが発展し、近代以降、西洋の糸かがり製本が導入されました。この製本方法は、ページがしっかりと固定されるため、長期保存に適しており、現在でも高品質な書籍や学術書で使用されています。


糸かがりの特徴と工程

糸かがりには以下の特徴があります。

1. 耐久性: 糸で綴じるため、製本物が強固になり、ページが外れにくくなります。頻繁に使用される書籍や長期間保存される書物に最適です。

2. 開きやすさ: 糸で丁寧に綴じられているため、部分に負荷がかからず、ページを平らに開けるのが特徴です。

3. 高級感: 手間をかけた製本方法であるため、高級書籍や特別版に多く採用されています。

糸かがり製本は以下の工程を経て完成します。

1. 折丁作成: 印刷物を適切な順序で折り重ね、折丁(フォルダー)を作ります。

2. 糸で縫製: 折丁を糸で縫い合わせます。機械で行う場合が多いですが、高級書籍では手作業もあります。

3. 背固め: 糸で綴じた背を接着剤で補強し、耐久性を向上させます。

4. 表紙の装着: 背が固まったら、表紙を取り付けて仕上げます。


糸かがりの用途

糸かがり製本は、以下のような用途で広く利用されています。

1. 学術書や辞書: 頻繁に使用される書籍において、糸かがりの耐久性が重要視されます。

2. 美術書や写真集: 高級感が求められる書籍では、糸かがり製本が採用されることが多いです。

3. 記念出版物: 長期間保存される記念出版物や限定版書籍で使用され、品質と耐久性を両立します。


現在の糸かがりの使われ方

現代では、糸かがり製本は高級書籍や特定の用途に特化した製本方法として使用されています。製本技術の進化に伴い、機械化が進み、大量生産にも対応できるようになりました。また、デザイン性を重視した製品にも採用されることが増えています。

さらに、オンデマンド印刷の普及により、少部数生産でも糸かがり製本が可能となり、個人出版や特注書籍においても利用されるようになりました。耐久性と美観を求める現代のニーズに応える技術として、糸かがりは欠かせない製本技法です。


糸かがりの課題と未来

糸かがりには以下のような課題があります。

1. コスト: 手間のかかる製本方法であるため、他の製本方法に比べてコストが高くなります。

2. 生産性: 大量生産に向かない場合があり、高速印刷との組み合わせが課題となることがあります。

3. 技術者の育成: 高品質な糸かがり製本を行うためには熟練した技術が必要であり、職人の育成が課題です。

未来の糸かがり製本は、自動化技術のさらなる発展によって効率化されると考えられます。また、環境に配慮した糸や接着剤の使用が進むことで、持続可能な製本方法としても注目されるでしょう。高品質な書籍を求めるニーズが続く限り、糸かがりは進化を続けていくと期待されます。

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