印刷業界におけるフレキソ印刷機とは？
印刷業界におけるフレキソ印刷機（ふりがな：ふれきそいんさつき、英：Flexographic Printing Press、仏：Presse d'Impression Flexographique）とは、フレキソ印刷を行うための専用の印刷機のことです。フレキソ印刷は、柔軟なゴムまたは樹脂製の版を使用して印刷を行う技術で、特に包装材やラベル、段ボールなどの大量生産品に適しています。速乾性インクを用いるため、高速かつ低コストでの印刷が可能であり、現在でも広く活用されています。
フレキソ印刷機の概要
フレキソ印刷機は、柔軟性のあるゴムや樹脂製の版（フレキソ版）を使用し、回転する印刷シリンダーに巻き付けて印刷を行う機械です。フレキソ印刷では、溶剤系や水性の速乾性インクを使用し、用紙やプラスチックフィルム、アルミホイル、段ボールなど、さまざまな素材に対応できます。
この印刷方式は、凸版印刷の一種であり、インクが版の凸部にのみ転写され、直接印刷物に押し付けて印刷します。フレキソ印刷機は、高速で大量の印刷が可能なため、食品包装、ラベル、カートン、新聞、雑誌など、多種多様な印刷物に使用されています。
フレキソ印刷機の歴史と由来
フレキソ印刷は、20世紀初頭にアメリカで開発されました。当初は「アニリン印刷」と呼ばれ、ゴム製の版とアニリン染料を使用していました。しかし、アニリン染料が食品包装に適さないとされ、安全なインクが求められるようになりました。
1950年代に入ると、食品業界向けにより安全で環境に優しい水性インクが開発され、これがフレキソ印刷の普及に大きく貢献しました。技術の進化に伴い、現在では速乾性のあるUVインクや電子ビームインクも利用されており、印刷品質が向上し、幅広い用途に対応できるようになりました。
フレキソ印刷機の現在の使われ方
現代において、フレキソ印刷機は以下のような用途で広く利用されています：
- 食品パッケージ：お菓子の袋や飲料のカートン、冷凍食品のパッケージなど、多様な素材に対応できるため、食品業界で多用されています。
- ラベル印刷：ボトルや缶のラベル印刷では、フレキソ印刷機が大量かつ高速での生産に適しています。
- 段ボール印刷：段ボールの外装印刷では、フレキソ印刷の高速性と低コストが活用されています。
- 医薬品包装：高い衛生基準が求められる医薬品包装にも、適切なインクと素材を使用して対応可能です。
また、デジタル技術の進化に伴い、フレキソ印刷機にデジタル要素を組み合わせたハイブリッド印刷機が登場し、小ロットの製品やカスタマイズ印刷にも対応できるようになっています。これにより、効率的な生産が求められる現代の市場ニーズに応えています。
フレキソ印刷機の利点と注意点
フレキソ印刷機の導入には、以下の利点があります：
- 高速かつ大量生産：フレキソ印刷機は高速で動作し、大量の印刷物を短時間で生産できるため、コスト削減に繋がります。
- 多様な素材への対応：紙、プラスチック、アルミなど、さまざまな素材に対応できるため、幅広い製品に利用可能です。
- 環境に優しいインク：水性インクやUV硬化インクの使用により、環境負荷を低減します。
- 印刷精度の向上：技術の進化により、フレキソ印刷でも高品質なグラフィックが可能になっています。
しかし、以下の点に注意が必要です：
- 初期投資のコスト：フレキソ印刷機の導入には高額な初期投資が必要であり、特に中小企業にとっては負担となります。
- 版の作成コスト：フレキソ版の製作には時間と費用がかかるため、頻繁なデザイン変更には不向きです。
- 調整の手間：印刷機の調整やメンテナンスが必要であり、専門知識が求められます。
まとめ
フレキソ印刷機は、包装やラベル、段ボールなどの大量生産品に最適な印刷技術として、長年にわたり活用されてきました。高速性と多様な素材への対応力を備え、環境に優しい印刷が可能なことから、現代の持続可能な製造プロセスにも適しています。今後もデジタル化や環境対応技術の進展により、さらに幅広い分野での利用が期待されています。
