印刷業界における糊とは?

印刷業界における(のり、Adhesive / Adhésif)とは、紙やプラスチック、布などの素材を接着するために用いられる接着剤の総称です。印刷物の製本やパッケージ、ラベルなど、さまざまな用途に応じた糊が使用されます。糊は、製品の仕上がりや耐久性を左右する重要な役割を果たしており、特に環境対応型の接着剤が注目されています。



糊の歴史と言葉の由来

糊の歴史は古く、紀元前から自然素材を利用した接着技術が存在していました。例えば、古代エジプトでは動物性の膠(にかわ)が使用されていました。日本でも、平安時代には米糊や魚膠が使用されており、和紙の製作や書籍の装丁に活用されていました。

「糊」という言葉は、元々植物や動物由来の接着物を指していましたが、近代に入り、化学技術の進化とともに合成樹脂を基にした接着剤が登場しました。これにより、用途や素材に応じて多様な特性を持つ糊が開発され、印刷業界においても幅広く利用されるようになりました。

印刷業界における糊の種類と用途

印刷業界で使用される糊には、大きく分けて以下の種類があります:

  • 水溶性糊製本ラベルの貼り付けに使用される。乾燥が速く、取り扱いが簡便なため多用されています。
  • ホットメルト:加熱して液状化し、冷却することで固まる糊。パッケージやダイレクトメールの封入に適している。
  • 感圧糊:圧力を加えることで接着する糊。ステッカーやシールに使用される。
  • リムーバブル糊:剥がして再利用可能な糊。一時的な接着を目的とした印刷物に使用される。

これらの糊は、用途や素材に応じて適切に選ばれます。例えば、書籍の製本では耐久性が求められるため、強力な接着力を持つホットメルト糊が使用されます。一方、パッケージ印刷では短時間で固まる糊が重宝されます。

現在の糊の使用状況と技術革新

近年、環境への配慮からエコロジー対応型の糊が注目されています。例えば、水性糊の中でも、揮発性有機化合物(VOC)の排出を抑えた製品や、生分解性を持つ接着剤が増えています。これにより、印刷業界でも持続可能な製品づくりが進められています。

また、糊の性能も進化しており、高速な印刷工程に耐えられる速乾性の糊や、異素材間の接着が可能な多機能型接着剤が開発されています。さらに、デジタル印刷やオンデマンド印刷に対応した新しい糊の需要も高まっています。

糊を使用する際の課題と対策

糊の使用においては、適切な選定や管理が重要です。例えば、糊が適切に乾燥しない場合、印刷物の品質や耐久性に悪影響を及ぼすことがあります。また、過剰な糊の使用はコスト増加や廃棄物の増大を引き起こします。

これらの課題に対応するため、印刷業界では糊の適正使用を促進する教育や、接着剤の塗布量を精密にコントロールできる装置の導入が進んでいます。また、リサイクル可能な接着剤を使用することで、廃棄物の削減にも取り組んでいます。

糊の未来と印刷業界への影響

糊の未来は、環境技術とデジタル化によって大きく変化すると予想されます。特に、再生可能資源を利用した接着剤や、スマートパッケージと連動する感応型接着剤が注目されています。また、3Dプリンティングや電子デバイスの製造においても、糊の役割が拡大しています。

印刷業界では、これらの技術革新を取り入れることで、製品の品質向上や環境負荷低減が実現されるでしょう。このように、糊は印刷物の完成度を高めるだけでなく、業界全体の持続可能性を支える重要な素材として、その価値をさらに高めていくと考えられます。

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