印刷業界における色差とは?

印刷業界における「色差」(ふりがな:しきさ、英:Color Difference、仏:Différence de Couleur)とは、2つの色の見え方の違いを数値で表したものです。印刷物の色再現性を評価する際に用いられ、色差が小さいほど、元の色に近い正確な色再現ができていることを意味します。一般的には、ΔE(デルタE)という指標が用いられ、印刷物の品質管理やカラーマッチングにおいて重要な役割を果たします。


色差の概要

色差は、異なる色同士の違いを客観的に評価するための指標です。人間の目は主観的に色を捉えるため、正確な色の違いを数値化することが求められます。そのため、CIE(国際照明委員会)が定めた色空間(CIE Lab)に基づいて、ΔE(デルタE)という色差の指標が使用されています。

ΔEは、2つの色のL*(明度)、a*(赤緑軸)、b*(黄青軸)の値を基に計算されます。一般的に、ΔEの値が小さいほど、2つの色は似ているとされます。印刷業界では、ΔE値が1.0以下であれば、人間の目にはほとんど色差を感じられないとされています。これにより、印刷物の品質管理やカラーマッチングの精度を向上させることができます。

色差の歴史と由来

色差の概念は、20世紀初頭に色科学が発展する中で生まれました。当初は、色の違いを定量的に評価する方法が存在せず、主観的な評価に頼っていました。しかし、印刷技術の進歩とともに、より正確な色の再現が求められ、色の違いを数値化する必要性が高まりました。

1976年、CIEは色空間の基準として「CIE Lab色空間」を制定しました。この色空間は、人間の視覚に基づいた色の表現方法であり、これを基にΔE(色差)が計算されるようになりました。これにより、印刷業界では色の管理が客観的かつ効率的に行えるようになり、カラーマネジメントシステムの導入が進みました。

色差の現在の使われ方

現在、色差は以下のような場面で広く利用されています:

  • 印刷物の品質管理:製品の色味が規定の基準に合致しているかを確認するため、ΔE値を使用して色差を測定し、色の一貫性を保ちます。
  • カラーマッチング:異なる素材や印刷機での色の再現を揃えるため、ΔE値を基に調整を行います。これにより、ブランドカラーの統一が可能です。
  • デジタル印刷:オンデマンド印刷やパッケージ印刷など、色再現が重要な印刷プロジェクトで、ΔE値を用いた管理が行われています。
  • ディスプレイのキャリブレーション:印刷物とデジタル画面の色を一致させるため、色差を調整し、モニターのキャリブレーションを行います。

さらに、最新の印刷機器やカラーマネジメントソフトウェアでは、リアルタイムでΔE値を測定し、印刷プロセス中に色差を自動調整する技術が導入されています。これにより、印刷工程の効率化と品質向上が実現されています。

色差の利点と注意点

色差の活用には、以下のような利点があります:

  • 品質の向上:色差を管理することで、印刷物の色の再現性が向上し、顧客満足度が高まります。
  • 効率的なカラーマッチング:ΔE値を基に色の調整を行うことで、異なる印刷物や素材間での色の統一が容易になります。
  • コスト削減:色の不一致による再印刷や廃棄物を減らすことで、生産コストが削減されます。

一方、以下の点に注意が必要です:

  • 基準の設定:ΔEの許容値は業界や製品によって異なるため、適切な基準を設定する必要があります。
  • 視覚的な認識の限界:ΔE値が小さくても、人によっては色の違いを感じる場合があり、完全な一致を保証するものではありません。
  • 測定環境の影響:光源や観察条件が異なると、ΔEの値も変わるため、統一された測定環境が求められます。

まとめ

色差の管理は、印刷業界において品質向上と効率化を実現するために不可欠な要素です。ΔEという数値を基に色の違いを定量的に評価することで、印刷物のカラーマッチングや品質管理が向上し、顧客満足度の向上にも寄与します。今後も、印刷技術の進化とともに、より正確で効率的な色差管理が求められることでしょう。

▶印刷用語辞典TOPへ戻る



↑ページの上部へ戻る

ビジプリの印刷商品

ビジプリの関連サービス