印刷におけるダンサーローラーとは?/span>
ダンサーローラーは、可動式のアームに取り付けられており、ウェブの張力の変化に応じて上下または前後に動くことで、張力を一定に保ちます。ウェブが速く動くときにはローラーが上昇(または前進)し、ウェブの速度が遅くなるとローラーが下降(または後退)することで、ウェブの張力が一定の範囲内に保たれるよう調整されます。
このシステムにより、印刷プロセスや包装プロセス中にウェブが伸びたり縮んだりすることを防ぎ、結果として印刷のズレや材料の損傷を最小限に抑えます。ダンサーローラーは、高速で正確な印刷や包装を実現するための重要な部品であり、印刷業界や包装業界における生産性と品質の向上に貢献しています。
ダンサーローラーの歴史と言葉の由来
「ダンサーローラー(Dancer Roller)」という名称は、ローラーがウェブ(紙やフィルム)の動きに応じて上下や前後に「踊る(Dance)」ように動くことに由来しています。フランス語では「Rouleau Danseur」と呼ばれ、印刷業界では一般的な張力制御技術の一つとして知られています。
19世紀末に輪転印刷技術が発展すると、紙送りの速度制御が印刷品質に大きな影響を与えるようになりました。特に、大量印刷が求められる新聞印刷やパッケージ印刷では、紙の張力が不安定だと印刷ムラや紙の破れが発生するため、テンション制御技術の導入が必要とされました。その結果、20世紀初頭にはダンサーローラーの原型が考案され、現在では自動制御システムと組み合わせて、高精度なテンション管理が行われています。
ダンサーローラーの役割と動作原理
ダンサーローラーは、印刷機のウェブテンションを一定に保つために動作し、印刷の安定性を向上させる役割を果たします。その主な動作原理は以下のとおりです。
1. ウェブの張力を自動調整
印刷機内でロール紙やフィルムを搬送する際、速度の変動や材料の伸縮によって張力が不均一になることがあります。ダンサーローラーは、この変動を検知し、自動的に上下に移動することでテンションを調整します。
2. 張力バランスの維持
印刷機の巻き取り部や給紙部では、ウェブの張力が過度に強いと紙が破れ、逆に弱いとシワが発生する可能性があります。ダンサーローラーはこれらの問題を防ぐため、張力バランスを最適に保ちます。
3. 印刷ズレの防止
ウェブの張力が不均一だと、印刷位置のズレ(レジスターズレ)が発生する原因となります。ダンサーローラーはウェブの動きを安定させ、精密な印刷を維持する役割を果たします。
ダンサーローラーの主な用途
ダンサーローラーは、特に連続した紙送りが必要なウェブ印刷において不可欠な部品です。以下のような用途で広く使用されています。
1. グラビア印刷
包装材料や雑誌印刷などで使用されるグラビア印刷では、高速で大量のロール紙を使用するため、ダンサーローラーによるテンション管理が重要となります。
2. フレキソ印刷
パッケージ印刷や段ボール印刷など、さまざまな素材に対応するフレキソ印刷では、素材ごとに異なる張力制御が求められます。ダンサーローラーを活用することで、安定した印刷が可能になります。
3. 新聞印刷
新聞の輪転印刷機では、1分間に何百メートルものロール紙が高速で送り出されるため、ダンサーローラーが紙送りの張力を最適に調整し、破れやシワを防ぎます。
4. ラベル・フィルム印刷
ラベルやフィルム印刷では、薄い素材を扱うことが多いため、ダンサーローラーを使用することで、シワや紙送りのズレを防ぎ、均一な印刷を実現します。
ダンサーローラーを使用する際の注意点
ダンサーローラーの性能を最大限に発揮するためには、適切な使用とメンテナンスが重要です。以下の点に注意しましょう。
1. ローラーの摩耗チェック
長期間使用すると、ダンサーローラーの表面が摩耗し、ウェブの滑りやズレが発生する可能性があります。定期的な点検と交換が必要です。
2. 適切なテンション設定
ダンサーローラーのテンション設定が適切でないと、紙やフィルムの破れ、シワの発生につながります。印刷機の仕様に応じた設定を行うことが重要です。
3. 自動制御システムとの連携
近年の印刷機では、テンション制御を自動化するシステムが導入されています。ダンサーローラーとセンサーを組み合わせることで、より精密な張力管理が可能になります。
まとめ
ダンサーローラーは、ウェブ印刷において紙やフィルムの張力を自動調整し、印刷品質を安定させるための重要な部品です。特にグラビア印刷やフレキソ印刷、新聞印刷、ラベル印刷などの分野で広く活用され、印刷ズレや紙の破れを防ぐ役割を果たします。適切なメンテナンスとテンション設定を行うことで、ダンサーローラーの効果を最大限に引き出し、より高品質な印刷を実現することができます。