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印刷業界における裁ちトンボとは?

印刷業界における裁ちトンボ(たちとんぼ、Crop Marks / Repères de coupe)とは、印刷物を正確に裁断するために設けられたマークのことです。これらの線は印刷物の外周に配置され、仕上がりサイズを示します。裁ちトンボは印刷業者が裁断機を使って用紙を正確にカットする際の目印となり、最終的な製品のサイズを確保するために不可欠です。


裁ちトンボの歴史と背景

裁ちトンボの起源は、活版印刷が主流だった時代にさかのぼります。当時、手作業で用紙を裁断していたため、正確な裁断位置を示すための印が必要でした。これが「トンボ」の始まりです。「トンボ」という呼称は、トンボのように交差する線が用いられていることに由来しています。特に、日本では精密な裁断技術が求められる中で、この名称が広まりました。

オフセット印刷デジタル印刷の時代に入っても、裁ちトンボの重要性は変わりません。裁断工程の自動化が進んだ現代でも、印刷物のズレを防ぎ、仕上がり品質を確保するために欠かせない要素となっています。

裁ちトンボの特徴と役割

裁ちトンボは、印刷データの四隅に配置される細い線やマークで、仕上がりサイズや裁断位置を正確に示すために使用されます。以下のような特徴と役割があります。

1. 裁断位置のガイド: 裁ちトンボは、裁断機を使用する際の基準となる目印です。これにより、印刷物を正確に仕上がりサイズにカットすることができます。

2. ズレの防止: 裁ちトンボは、用紙の裁断時に生じるズレを防ぐ役割を果たします。これにより、デザインの一部が切れてしまうリスクを軽減します。

3. 印刷物の一貫性: 裁ちトンボを使用することで、大量印刷の際にも全ての印刷物が同じサイズに仕上がることを保証します。特に、冊子パンフレットのように複数のページ綴じられる場合、各ページのサイズが均一であることが重要です。

裁ちトンボの具体的な使い方

裁ちトンボは、以下のような場面で活用されます。

1. ポスターやフライヤー: 用紙の端までデザインが広がる印刷物では、裁ちトンボがないと裁断時にデザインが欠ける可能性があります。裁ちトンボを設定することで、用紙全体に均一に印刷され、正確な仕上がりが得られます。

2. 書籍のページ: 書籍やパンフレットの製本工程では、各ページを正確に裁断するために裁ちトンボが活用されます。特に、製本後にページがずれてしまわないようにするためには、裁ちトンボが重要です。

3. 名刺やハガキ: 小さな印刷物でも裁ちトンボを使用することで、裁断時のズレを防ぎ、均一なサイズに仕上げることができます。

裁ちトンボ設定時の注意点

裁ちトンボを正しく設定しないと、印刷物品質に悪影響を及ぼす可能性があります。以下の点に注意して設定することが重要です。

1. 泣き出し(塗り足し)の確保: 裁ちトンボの外側には3mmから5mm程度の塗り足し(泣き出し)を設けることで、裁断時のズレによる白い縁の発生を防ぎます。デザインデータ作成時には、塗り足しを含めた設定が必須です。

2. 正確な配置: 裁ちトンボは仕上がり線に沿って正確に配置する必要があります。不正確なトンボ設定は、印刷物の仕上がりサイズにズレを生じさせる原因となります。

3. DTPソフトウェアの活用: Adobe IllustratorInDesignなどのDTPソフトでは、裁ちトンボを自動的に設定する機能があります。これらのツールを活用して、効率的かつ正確なデータ作成が可能です。

裁ちトンボの課題と未来

裁ちトンボにはいくつかの課題がありますが、今後の技術革新により解決が期待されています。

1. 自動化の限界: 印刷工程の自動化が進む中でも、裁ちトンボの設定は依然として手作業が必要な場面が多いです。AI技術を活用した自動裁断技術が進展すれば、さらなる効率化が期待されます。

2. 環境負荷の低減: 印刷物の裁断によって生じる紙の廃材を減らすために、裁ちトンボと塗り足しの設定を最適化することが求められています。エコフレンドリーな印刷手法の導入が進められています。

3. デジタル印刷への対応: デジタル印刷の普及により、裁ちトンボの設定が一部自動化されていますが、完全な精度を達成するにはさらなる技術革新が必要です。今後、デジタル化の進展により、裁ちトンボの役割や設定方法も進化していくでしょう。

裁ちトンボは、印刷物の品質と仕上がりを確保するための基本的な技術です。今後も印刷業界において、精度の高い裁断を支える重要な要素であり続けることでしょう。また、デジタル技術やAIの活用により、裁ちトンボ設定の自動化が進むことで、さらなる効率化と品質向上が期待されます。

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