【インキセル】ビジプリ印刷用語辞典

インキセルの歴史と由来

インキセルの概念は、精密なインク供給を必要とする印刷技術の発展とともに生まれました。20世紀初頭、印刷技術が進化する中で、インクの供給をより均一にするための方法が模索されました。その結果、アニロックスローラーが開発され、このローラーに微細なセルを設けることで、インクの供給が大幅に改善されました。

最初のアニロックスローラーは、金属のローラーに手作業で刻まれたセルを使用していました。しかし、技術の進歩に伴い、機械加工やレーザーエッチングによって、より精密で均一なセルが作成できるようになりました。これにより、インキセルの大きさや深さを細かく調整することが可能となり、さまざまな印刷ニーズに対応できるようになりました。

特にフレキソ印刷やグラビア印刷では、インキセルが不可欠な要素として広く採用されています。これらの印刷技術では、インクを薄く均一に塗布することが求められるため、インキセルの精度が印刷品質に直結します。

インキセルの目的と重要性

インキセルの主な目的は、インクの供給量を正確にコントロールし、印刷物に均一なインク層を形成することです。インキセルが正確に機能することで、印刷品質が向上し、色の均一性や鮮やかさが保たれます。特に、高品質な印刷を求められる包装印刷やラベル印刷などでは、インキセルの性能が非常に重要です。

インキセルの大きさや深さは、使用するインクの粘度や印刷する素材に応じて調整されます。セルが深いほど多くのインクを保持できますが、過剰なインク供給は印刷物にムラを生じさせるリスクがあります。一方、セルが浅いとインク量が不足し、印刷物が薄くなってしまう可能性があります。そのため、最適なセルの設計が必要です。

また、インキセルは印刷速度やインクの乾燥時間にも影響を与えます。例えば、高速印刷ではインキセルが効果的にインクを供給しなければなりませんし、速乾性のインクを使用する場合にはインクがセル内で乾燥しないような設計が求められます。

現在のインキセルの使われ方

現在、インキセルは主にアニロックスローラーで使用され、フレキソ印刷やグラビア印刷においてその役割を果たしています。アニロックスローラーは、数千から数百万のインキセルを持ち、それぞれが非常に小さく、精密に加工されています。これにより、インクが均一に供給され、印刷物の品質が保証されます。

フレキソ印刷では、インキセルの深さや形状が重要な要素となります。異なる印刷条件に応じて、最適なインキセルの設計が必要です。また、レーザーエッチング技術の発展により、より精密で一貫性のあるインキセルが製造可能となり、印刷品質がさらに向上しています。

さらに、インキセルの材料やコーティングも進化しています。セル内にインクが長時間残留しないようにするためのコーティング技術や、セルの耐久性を高めるための新素材の導入が進んでいます。これにより、インキセルの寿命が延び、メンテナンスの頻度が減少し、コスト削減にも寄与しています。

インキセルに関する注意点

インキセルを使用する際には、いくつかの注意点があります。まず、セルの汚れや詰まりに注意する必要があります。インクの乾燥や異物の混入によってセルが詰まると、インク供給が不均一になり、印刷品質が低下する可能性があります。定期的なクリーニングと点検が重要です。

また、インキセルの選択も重要です。印刷する素材や使用するインクに応じて、最適なインキセルのサイズや形状を選ぶことが必要です。適切でないインキセルを使用すると、印刷結果に影響を与える可能性があるため、事前のテストや調整が欠かせません。

さらに、インキセルの劣化にも注意が必要です。長期間使用することで、セルの形状が変化したり、表面が摩耗したりすることがあります。これにより、インク供給が不均一になり、印刷品質が低下するため、セルの定期的な交換や修復が推奨されます。

まとめ

印刷業界におけるインキセルは、インクの供給量を正確にコントロールするための重要な要素であり、特にフレキソ印刷やグラビア印刷で広く使用されています。その歴史は印刷技術の進化とともに発展し、現在では精密なセル設計が可能となっています。インキセルの適切な選択とメンテナンスにより、高品質な印刷物が安定して生産され、印刷工程全体の効率が向上します。