印刷業界におけるPS版とは?

印刷業界におけるPS版(ぴーえすばん、Presensitized Plate / Plaque présensibilisée)とは、オフセット印刷に使用される感光性のアルミニウム製印刷版のことを指します。この版は、表面に感光性樹脂が塗布されており、露光現像を行うことで印刷に必要な画像部分非画像部分を形成します。PS版は高精度で大量印刷に対応可能なため、商業印刷や出版業界で広く利用されています。


PS版の歴史と由来

PS版は、1960年代に登場した技術で、従来の手作業による印刷版の制作工程を大幅に効率化しました。それ以前の印刷では、感光性フィルムを使用して印刷版を作成する工程が複雑で、熟練した技術が必要でした。しかし、PS版の開発により、あらかじめ感光性コーティングが施された印刷版を用いることで、露光・現像だけで簡単に印刷版を作成できるようになりました。

名称の「PS」は、英語のPresensitized(事前に感光処理された)から来ています。この技術は、品質の均一性を保ちながら印刷版の制作時間を短縮し、印刷業界に革命をもたらしました。現在でも、PS版はオフセット印刷の標準的な技術として使用されています。


PS版の特徴と構造

PS版の主な特徴は以下の通りです。

1. 高い解像度: 精密な感光性樹脂を使用しているため、細かいデザインや文字を忠実に再現できます。

2. 大量印刷への適応: アルミニウム製の基板により、耐久性が高く、長時間の印刷作業でも品質を保つことができます。

3. 簡便な製版プロセス: 露光と現像だけで印刷版が完成するため、製版工程が大幅に短縮されます。

PS版の構造は以下のようになっています。

1. 基板: 主にアルミニウムを使用し、軽量で強度が高い特性を持ちます。

2. 感光層: 光に反応する感光性樹脂が塗布されており、露光によって画像部分が形成されます。

3. 保護層: 感光層を保護するための薄いコーティングが施されており、製版工程中のダメージを防ぎます。

PS版の製版プロセス

PS版を使用した製版プロセスは以下の手順で進められます。

1. 露光: デジタルデータをもとにしたフィルムまたはCTP(コンピュータ・トゥ・プレート)技術を使用し、PS版に光を照射します。

2. 現像: 露光後、現像液を使って画像部分と非画像部分を分離します。画像部分はインクが付着し、非画像部分は水が付着する性質を持ちます。

3. 仕上げ: 印刷機に取り付ける前に、表面を保護する加工やクリーニングを行います。


PS版の用途

PS版は、以下の用途で広く使用されています。

1. 商業印刷: カタログ、ポスター、パンフレットなどの大量印刷において、高精度な再現性が求められる場面で使用されます。

2. 出版業界: 書籍や雑誌など、多ページの印刷物でPS版の耐久性と精密さが活用されます。

3. 包装印刷: 高い解像度を必要とする商品パッケージの印刷にも適しています。


現在のPS版の使われ方

現在では、PS版はCTP技術の普及によりさらに効率化されています。従来のフィルムを使用する露光工程を省き、デジタルデータから直接PS版に画像を転写できるため、製版工程が迅速化されています。また、環境に配慮した「無現像PS版」も登場しており、現像液を使用せずに製版できる技術が注目されています。


PS版の課題と未来

PS版には以下の課題があります。

1. 環境負荷: 現像液や廃材の処理が必要なため、環境負荷が問題視されています。

2. 専門的な設備: PS版を使用するためには専用の製版機や印刷機が必要で、初期投資が大きい点が課題です。

3. デジタル印刷との競合: 小ロットや短納期に対応するデジタル印刷の普及により、PS版の需要が一部で減少しています。

未来のPS版技術は、環境負荷を軽減する素材や製版プロセスの改良が進むと期待されています。また、AIや自動化技術を取り入れることで、より精密で効率的な製版が可能となるでしょう。高品質な印刷が求められる限り、PS版は印刷業界の重要な役割を果たし続けると考えられます。

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