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印刷業界におけるチェースとは?

印刷業界におけるチェース(ちぇーす、Chase / Châssis typographique)とは、活版印刷において、組み上げた活字印刷版を固定するための枠のことを指します。この枠は、印刷機の内部に設置され、版を安定させる役割を果たします。チェースは、活字を正確に配置し、印刷時のズレや歪みを防ぐための重要な道具です。


チェースの歴史と言葉の由来

チェースの起源は、15世紀のグーテンベルクによる活版印刷技術の発明にまで遡ります。当時の印刷技術では、活字を手作業で組み合わせ、木製や金属製の枠で固定する必要がありました。この枠の役割を果たしたのがチェースです。「Chase」という名称は、英語で「追い込む」という意味があり、活字を枠内にしっかりと押し込む作業を表しています。

初期のチェースは木製でしたが、耐久性や精度を求めて金属製(主に鉄製や鋼製)のチェースが主流となりました。印刷技術が発展する中で、チェースの形状やサイズも多様化し、さまざまな印刷物に対応できるようになりました。

チェースの特徴と構造

チェースは、印刷工程において以下のような特徴と構造を持っています。

1. 材質: 現代のチェースは主に鋳鉄や鋼鉄で作られており、耐久性と安定性に優れています。一部の軽量用途ではアルミ製のチェースも使用されています。

2. 枠の形状: 長方形や正方形の形状が一般的で、活字やがずれないようにしっかりと固定できる設計になっています。

3. クワ(締め具)の使用: チェース内に活字を固定する際には、「クワ」と呼ばれる締め具を用いて圧力をかけます。この操作により、印刷時の動きやズレを防ぎます。

4. サイズの多様性: チェースのサイズは印刷物や印刷機に応じて選択されます。小型のチェースは名刺やはがき印刷に、大型のチェースはポスターや新聞印刷に使用されます。

チェースの印刷業界での役割

チェースは、活版印刷の工程で重要な役割を果たしており、以下のような場面で使用されます。

1. 活字の固定: 組み上げた活字をしっかりと固定し、印刷時のズレや動きを防ぎます。これにより、高精度な印刷が可能になります。

2. 版の保持: 活字以外にも、版画や写真版など、さまざまな印刷版を固定する際にも使用されます。これにより、複雑なデザインや図版の印刷が実現します。

3. 印刷機との連携: チェースは印刷機の指定箇所にセットされ、機械的に安定した位置を保つための役割を担います。これにより、印刷作業がスムーズに進行します。

チェースの進化と現在の使われ方

活版印刷が主流だった時代には、チェースは必需品でしたが、現在ではオフセット印刷デジタル印刷の普及により、使用頻度は減少しています。しかし、一部の専門的な印刷物や高級感を求める印刷では、活版印刷が根強い人気を持ち続けており、チェースも引き続き使用されています。

また、アートやクラフトの分野でもチェースは注目されています。活版印刷を使ったポストカードや名刺、招待状など、特別な質感やデザインを求める用途で活用されています。近年では、ヴィンテージ印刷機の復元や趣味としての活版印刷でもチェースが用いられています。

チェースの課題と未来

チェースに関連する課題と可能性について、以下のような点が挙げられます。

1. 製造コスト: 高品質なチェースを製造するには、精密な加工が必要であり、コストがかかることがあります。これが、低予算のプロジェクトでの導入を難しくしています。

2. 活版印刷技術の継承: 活版印刷の技術自体が減少傾向にあり、チェースの利用機会も限られつつあります。この技術を次世代に継承する取り組みが求められています。

3. 新素材の可能性: 伝統的な金属製チェースに代わり、軽量でコスト効率の良い素材を用いたチェースが開発される可能性があります。

チェースは、印刷業界における歴史的な道具として、また現在でも特殊な用途やアート的なプロジェクトで重要な役割を果たしています。印刷の文化や技術が進化する中で、チェースも新しい用途やデザインに応じて進化を続けるでしょう。

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