印刷業界における足継ぎとは?
印刷業界における足継ぎ(あしつぎ、Sheet Joinery / Raccordement des feuilles)とは、大判の印刷物や長尺の印刷工程において、複数の紙を接合し、連続的に使用可能な状態にする技術や作業のことを指します。この作業は、紙の無駄を減らし、大型印刷物や特殊印刷に対応するための重要な工程です。特に、ポスター印刷やパッケージ印刷などで頻繁に活用されます。
足継ぎの歴史と由来
足継ぎの歴史は、印刷技術が進化していく過程で生まれました。特に、近代印刷機が導入される前の手作業中心の時代、大型の紙が手に入りにくい状況下で、必要なサイズを得るために複数の紙を接合する技術が求められました。この工程を「足を継ぐ」と表現したことが語源とされています。
19世紀後半に活版印刷が普及すると、足継ぎはポスターや広報用印刷物の制作で一般的になりました。その後、20世紀に入り、オフセット印刷や輪転印刷が登場すると、足継ぎは効率化のための特化した工程として発展しました。現在では、機械を用いた高精度な足継ぎ技術が主流です。
足継ぎの工程と方法
足継ぎは、以下の工程で行われます。
1. 紙の選定: 足継ぎに使用する紙は、厚みや質感が一致していることが重要です。異なる紙を接合すると、印刷結果にばらつきが出る可能性があります。
2. 接合方法: 接合には、主に糊(のり)を使用した方法と、熱圧着技術を用いる方法があります。糊を使用する場合、専用の接着剤が使われ、重ねた部分をローラーなどで均一に押さえます。一方、熱圧着では、特殊な機械で紙を高温で圧着することで強力に接合します。
3. 加工後の確認: 足継ぎ後は、接合部分が目立たないか、強度が十分かを確認します。特に、大型の印刷物では、接合部分が印刷内容に影響を与えないかが重要です。
印刷業界での足継ぎの役割
足継ぎは、印刷業界において以下のような役割を果たします。
1. 大型印刷物の制作: 足継ぎを行うことで、通常の紙幅を超えるサイズの印刷物を作成することが可能になります。これにより、特大ポスターやバナーなどの制作が実現します。
2. 紙の節約: 大判の紙が高価または入手困難な場合、手持ちの紙を接合して使用することでコスト削減につながります。
3. 特殊なデザインへの対応: 特定のデザインやレイアウトに合わせて紙を足継ぎすることで、デザインの自由度が広がります。特に、パッケージ印刷では複雑な形状に合わせた足継ぎが重要です。
足継ぎの課題と改善策
足継ぎには以下のような課題がありますが、近年の技術進歩により改善されています。
1. 接合部分の目立ち: 足継ぎの接合部分が目に見えてしまうと、印刷物品質が低下します。この問題を解決するため、高精度な接着技術や目立たない接合方法が開発されています。
2. 接合部分の強度不足: 特に重量がかかる印刷物の場合、接合部分が破れるリスクがあります。このため、高強度の接着剤や熱圧着技術が普及しています。
3. 作業効率の向上: 足継ぎは手作業が多く含まれる場合がありますが、近年は自動化装置の導入が進み、作業効率が向上しています。
足継ぎの現代的な応用
現代の印刷業界では、足継ぎはさらに高度化されています。デジタル印刷との組み合わせにより、足継ぎ部分が印刷のデザインに統合されることが可能となり、一体感のある仕上がりが実現します。また、環境配慮型の接着剤の利用が増え、サステナブルな印刷工程としても注目されています。
足継ぎは、印刷業界における伝統的な技術でありながら、現在も進化を続ける重要な工程です。これにより、デザイン性、コスト効率、環境負荷の軽減など、多くの面で業界に貢献しています。