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印刷業界におけるイタリック体とは?

印刷業界におけるイタリック体(ふりがな:いたりっくたい、英:Italic Type、仏:Italique)とは、文字が右に傾斜した書体の一種を指します。特に、強調や引用、特別なニュアンスを持たせる際に使用されることが多いです。元々はルネサンス期のイタリアで生まれた書体で、手書きの書風を再現する目的で考案されました。現在ではデジタルフォントにおいても広く採用され、書籍や広告、デザインの場面で重要な役割を果たしています。


イタリック体の概要

イタリック体は、文字が通常の直立体ローマン体)に対して右斜めに傾いているのが特徴です。以下の特性を持ちます:

  • ▶強調効果:本文中の特定の単語やフレーズを目立たせるために使用されます。
  • 引用や専門用語の区別:引用文や外国語の表記、専門用語の表現に用いられます。
  • ▶手書き風の美しさ:曲線や流れるような線が特徴で、柔らかくエレガントな印象を与えます。

また、イタリック体には「真のイタリック体」と「スラント体(単純な傾斜)」の2種類があり、前者は独自の字形設計を持つ一方で、後者は既存のローマン体を単純に傾けたものです。


イタリック体の歴史と由来

イタリック体の起源は、15世紀末から16世紀初頭のルネサンス期イタリアにあります。当時、手書きで用いられていた草書体(カリグラフィー)を基にして、印刷用に書体として整えられました。

最初にイタリック体を印刷物に使用したのは、ヴェネツィアの印刷工アルドゥス・マヌティウス(Aldus Manutius)です。1501年に出版された「ヴァージル詩集」において、フランチェスコ・グリフォ(Francesco Griffo)という彫刻師がデザインしたイタリック体が使用されました。この書体は手書きの書風を活かしながらも、コンパクトで効率的なレイアウトを可能にするものでした。

その後、イタリック体はヨーロッパ中に広まり、特に詩や文学作品などの装飾的で芸術性の高い印刷物で広く使用されるようになりました。


イタリック体の現在の使われ方

現在、イタリック体は印刷物やデジタルデザインのさまざまな場面で使用されています:

  • ▶書籍や雑誌:本文中の引用や特定の単語の強調、タイトルのサブヘッドに使用されます。
  • ▶広告やポスター視覚的に動きや流れを表現したい際に採用されます。
  • ロゴデザイン:ブランドイメージに柔らかさや動的な印象を与えるために使用されます。
  • ▶学術論文:ラテン語の学名や外国語の表記で用いられることが一般的です。

デジタルフォントでは、AdobeやGoogle Fontsをはじめとする多くのプラットフォームでイタリック体が提供されており、デザインや用途に応じて選択可能です。


イタリック体の注意点

イタリック体を使用する際には、以下の点に注意が必要です:

  • ▶視認性の確保:長い文章で多用すると読みづらくなるため、適切なバランスで使用します。
  • ▶フォントの選定:「真のイタリック体」と「スラント体」の違いを理解し、デザインの意図に合ったものを選びます。
  • ▶文化的背景の考慮:イタリック体の使用目的や意味が文化圏によって異なる場合があるため、適切に判断します。

まとめ

イタリック体は、印刷業界やデザインにおいて重要な役割を果たす書体の一つです。15世紀末のルネサンス期イタリアで生まれ、現在でも強調や引用、視覚的な効果を持たせるために広く使用されています。その美しさと機能性を理解し、適切に使用することで、印刷物やデザインの魅力を一層引き立てることができます。

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