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印刷業界におけるクラフトパルプとは?

印刷業界におけるクラフトパルプ(くらふとぱるぷ、Kraft Pulp / Pâte Kraft)とは、クラフト法と呼ばれる化学処理工程を用いて木材から製造されるパルプのことです。このパルプは強度が高く、耐久性に優れるため、包装用紙や段ボール、印刷用紙など、幅広い用途で使用されています。クラフトパルプは、未晒(ホワイト)パルプ晒(ブラウン)パルプの2種類があり、用途に応じて使い分けられます。環境負荷を抑えた製造プロセスが評価され、持続可能な紙製品の製造にも寄与しています。


クラフトパルプの歴史と起源

クラフトパルプの製造技術であるクラフト法は、19世紀末にスウェーデンで開発されました。「クラフト」という名前は、スウェーデン語で「強い」という意味を持ち、この方法で製造されたパルプが特に高い強度を持つことに由来しています。当初は包装材料の製造を主な目的としていましたが、その後の技術革新により、印刷業界でも広く活用されるようになりました。

クラフト法は、木材チップを苛性ソーダ(NaOH)や硫化ナトリウム(Na2S)を含むアルカリ性の薬液で処理することで、リグニンを分解してセルロースを抽出するプロセスです。この方法は、他の製造方法に比べてパルプの強度が高く、廃液の回収・再利用が可能であるため、持続可能性が高いと評価されています。

クラフトパルプの現代における使用方法

現代では、クラフトパルプは印刷用紙、段ボール、ティッシュペーパー、包装用紙など、さまざまな製品に使用されています。未晒クラフトパルプは、漂白工程を行わないためブラウン色を持ち、強度が求められる段ボールや包装紙の原料として最適です。一方、晒クラフトパルプは、漂白によって白色度を高めており、高品質な印刷用紙やティッシュペーパーの製造に使用されます。

クラフトパルプは、耐久性や加工性が求められる印刷物に特に適しています。例えば、高品質なカタログや書籍の印刷では、耐久性があり滑らかな表面を提供するパルプが必要です。また、クラフトパルプを使用した紙製品はリサイクルが容易であり、循環型経済に貢献しています。

クラフトパルプの技術と仕組み

クラフトパルプの製造工程は以下の主要なステップで構成されています。

1. 木材チップの調整: 原料となる木材はチップ状に加工され、化学処理の効率を高める準備が行われます。

2. 化学処理: 木材チップを苛性ソーダや硫化ナトリウムを含む液体(白液)で煮沸します。この工程で、木材中のリグニンが分解され、セルロース繊維が抽出されます。

3. 洗浄と漂白: 未晒クラフトパルプはこの段階で完成しますが、晒クラフトパルプの場合はさらに漂白工程が行われ、白色度を高めます。

4. 廃液の回収: 分解されたリグニンや化学薬品を含む液体は回収・再利用され、廃棄物の削減と環境負荷軽減に寄与します。

クラフトパルプのメリットと注意点

クラフトパルプの主なメリットは、強度の高さと環境負荷の低さです。耐久性が求められる段ボールや包装用紙に適しており、印刷用紙としても高品質な仕上がりを提供します。また、製造プロセスで廃液を回収・再利用できる点は、他の製造方法に比べて環境に優れています。

一方で、注意点としては、製造時の薬品使用量やエネルギー消費量が比較的高いことが挙げられます。そのため、効率的な資源利用や再生可能エネルギーの活用が求められています。また、漂白工程において使用される化学薬品が環境負荷を与える可能性があるため、環境基準を遵守した製造プロセスが重要です。

クラフトパルプの今後の展望

クラフトパルプは、今後も印刷業界や製紙業界で重要な役割を果たすと考えられます。特に、再生可能資源を使用し、リサイクル可能な製品を製造するプロセスが評価される中で、クラフトパルプの需要はさらに高まるでしょう。環境対応型の漂白技術や、エネルギー効率を高める新技術の導入が期待されています。

また、特殊紙や高機能紙の製造においても、クラフトパルプの利用が拡大すると予測されます。これにより、印刷業界の多様なニーズに応えると同時に、持続可能な社会の構築に貢献する素材として進化を続けていくでしょう。

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