写真パネルの歴史と現在の技術
近年では写真パネルは身近なものになり、街のいたるところで見かけるようになりました。
そのため街を通る人も写真パネルがあるからといって、特に目を留めず素通りしてしまうこともあるでしょう。
せっかく広告費をかけたのに素通りして宣伝効果を生まないのはもったいないことです。
そこで本記事は、写真パネルがそもそもどのような歴史をたどって現在の形に行き着いたのか、今一度おさらいする内容になっています。
本記事を読むと
・写真パネルの歴史
・現在の写真パネル
・印刷に使われるインクと紙の仕組み
がわかります。本記事を読んで写真パネルのルーツを知り、「効果的に宣伝するには?」というテーマを原点から検討してみて頂ければ幸いです。
■写真パネルとは
写真パネルとは読んで字のごとく、厚みのある板に写真が描かれたパネルです。
ただ一言でいっても実は製造過程や、使う素材がさまざまに細分化されます。
製造過程で言えば写真パネルに限らずパネル印刷全般には
・直接印刷
・貼り合わせ
・アルミ複合板
という3つの種類があり、写真パネルのオーダーには
・フォトパネル
・キャンバスプリント
・メタルパネル
の3つのオーダーの仕方があります。
■写真パネルの歴史と変遷
ここでは写真パネルの歴史と変遷について説明します。
写真パネルのルーツについて知って頂くと、改めて「このタイプのパネルはそもそも何が目的で作られたか」ということへのヒントになることでしょう。
ぜひじっくり読んでみて下さい。
▶板画(パネル画)
板絵(いたえ)もしくはパネル画は、1枚〜数枚の板を組み合わせた木製のパネル(板)の上に描かれた絵画を指します。
板画の歴史はとても古く、紀元前6世紀頃の古代ローマ・ギリシアなどでも一流の芸術品とみなされておりました。
ローマ帝国皇帝のセプティミウス・セウェルスと彼の子供たちを描いた「セウェルスの円形画」は現存する最も古い板絵として有名です。
このころから家族との団らんを芸術として表現したい人間の欲求があったことが伺えます。
また後述する現在の写真パネルの印刷方法「キャンバスプリント」では帆布(はんぷ 平織りにした厚手の織物)に写真もしくはイラストの印刷を施し、あえて写真が絵画のような雰囲気に仕上げることが好まれています。
実際キャンバスが普及する16世紀半ばまでは、板画は絵画制作にもっともよく使用された方法です。現在のキャンバスプリントは写真なみの色彩を表現できますが、ルーツとしては人間の温かみを表現するところだと予想されます。
▶フレスコ画
フレスコ画は、壁に直接絵を描く方法です。
フレスコとは新鮮ということを意味しています。
フレスコ画は壁に漆喰を塗り、その漆喰がまだ生乾きの(新鮮な)状態の時に水もしくは石灰水で溶いた顔料で描くやり方なのですが、この生乾きの状態が名前の由来になります。
失敗したらやり直しがきかないなどのことから、前述の板画ほど広く普及した画法ではありません。
しかしその希少さから残っているものの評価は高く、ミケランジェロの「最後の晩餐」などは誰もが知っている名画と言えます。
少し違うかもしれませんが、現在でも黒板アートやサンドアートなど画材を一般的な紙や板にとらわれず表現する方法がブームになっています。
画材の希少性に惹かれる人間の心理は、今日でも残っている象徴なのかもしれません。
▶ポスターの起源と発展
上記のような絵を描くという技術の進歩が積み重なった上でさらに、今日の写真パネルへと進化を遂げます。ただ今日の写真パネルの誕生の前にはポスター技術の進歩が欠かせません。
ここからはポスターの起源と発展について解説します。
ポスターの起源
世界におけるポスターの歴史は1880年代とされています。生まれた当初から宣伝を目的に作られており、その役割は現在も変わっていません。
ただし現代でポスターといえば絵画や写真が主ですが、当時は文字だけで手書きで作られていました。つまりポスターは印刷の技術が生まれる前から生まれていたのです。
手書きの時代は限られた人しか見られないので当然宣伝効果は期待できなかったですが、印刷技術の発明により発行スピードが圧倒的に向上し、今日では宣伝効果も高くなりました。
ポスターに印刷技術が使われ始めたのは、19世紀半ばに金属や石に描写したものを紙に刷るリトグラフが普及し始めた頃です。
印刷技術(リトグラフ)の誕生により、安価にポスターを大量生産できるようになりました。そのため、色鮮やかなポスターが開発され、今日のポスター時代の幕開けとなったのです。
当時ポスターは珍しがられ盗まれることもあるなど、ポスター自体がアート作品のような価値が生まれ、現在では広告に最適なものとなりました。
現在のポスター
現在のポスターは大判プリンター(BOなどの大きなサイズが印刷できるプリンター)でプリントされていますが基本的にはインクジェット式です。
リトグラフのように版がありそれを転写するという有版方式ではなく、液体インクを細かく滴にして用紙に吹き付ける非接触の印刷方法になります。
・これにより版を作る時間とコストが削減可能
・小ロットでも対応可能
・有版方式に勝る鮮明な色彩を表現
ができるようになり、今日ではポピュラーな方法となっています。
またディスプレイやLED等のデジタル技術が発展したことで、紙媒体に限らず電子看板(デジタルサイネージ)なども見られるようになりました。
このデジタルサイネージの採用により従来のポスターからさらに
・視認性が良い:紙媒体のポスターが見慣れすぎてしまい目を引くことができる。
・広告内容の変更が容易:インターネット経由でデータを転送することによる遠隔操作が可能
・視覚だけでなく聴覚にも訴える事ができる:スピーカー付きのモニターを使用することで動画を見せることが可能
などの点で紙媒体を上回る広告効果があります。
■現在の写真パネル
冒頭で説明したように現在の写真パネルには下記3つのオーダーの仕方があり、その3つによって特徴や用途が異なります。
・キャンバスプリント
・フォトパネル
・メタルパネル
それぞれ解説します。
▶キャンバスプリント
「キャンバスプリント」とは、キャンバスと呼ばれる平織りにした厚手の織物に、写真もしくはイラストの印刷を施し、木枠に貼り付けてパネルにしたものです。
仕上がりの特徴として
・写真が絵画のような雰囲気に仕上がりになる。
・布地へのプリントになるので紙よりも丈夫で、しわになりにくい。
という点が挙げられます。
今日ではインクジェットプリンターの技術進歩によって、キャンバス地により写真を美しくプリントできるようになり、キャンバス地へのプリントサービスの人気が上がっています。
▶フォトパネル
一般的に布ではなく、印画紙をパネルに貼ったものはフォトパネルや写真パネルと呼ばれます。
貼り合わせる紙を
・光沢紙
・フォト光沢紙
・半光沢紙・合成紙
の中から選ぶことができ、選択肢の幅が多いのが特徴です。
▶メタルパネル
写真パネルにおける「メタルパネル」は軽量アルミパネルに写真を直接印刷するというシンプルな方法になります。
メタルパネルの特徴は下記の通りです。
・色褪せることがなく半永久的に使える
・耐久性に優れている
・メンテナンスが簡単(除光液の様な薬品を使用して汚れを落としても印刷が落ちない)
・高発色・高光沢
・軽くて丈夫
■一般家庭に溶け込むパネル
パネルに関しては商用の広告パネルのみではなく、最近では一般家庭にインテリアとして飾られることも増えてきました。
そこでここでは一般家庭で溶け込む2つのパネルについて解説します。
▶アートパネル
アートパネルは、絵を額に入れない状態で、作品を素地のままで展示する手法のアート作品です。
・キャンバス
・印画紙
・ファブリック
・和紙
などの素材が使われます。
キャンバスや印画紙、和紙は聞き馴染みがあったり、先程説明したりとわかる方も多いでしょう。
ファブリックについてはパッと聞いて想像しづらい方もいるかもしれません。実は生地や織物の総称として広い意味で用いられることが多いからです。
また、最近ではファブリックパネルと呼ばれる北欧生まれのインテリアのアイテムが人気があり、木製のフレームに様々な柄の入った生地を張ったものを指します。
ファブリックパネルは
・壁に掛ける
・床に置いて壁に立てかける
・家具の上に飾る
などインテリアとして多様な楽しみ方があります。
ご家庭だけでなくアットホームな雰囲気を出したい店舗などには、お客様の気持ちを落ち着かせる効果が期待できるのではないでしょうか。
▶デジタルフォトフレーム
デジタルカメラの普及と液晶ディスプレイの多様化により、デジタルフォトフレームは一般家庭にも普及し、プリントすることなく手軽に写真を表示することができるようになりました。
デジタルカメラやパソコンで撮影した写真をメモリーカードに記録し、スライドショーやカレンダーと写真の組み合わせが可能です。
さらに、技術が発展し多様なサイズのものを安価に入手できるようになれば、販促用やコミュニケーション用のディスプレイとしても用途が広がります。
■写真パネル印刷に関わる最新の用具
今日では写真パネル印刷にはインクジェットプリンターが使われていることはすでにお伝えしました。
インクジェットプリンターの発展によってさまざまなものへの印刷ができるようになりましたが、もちろんそれに使われるインクと紙無くしてはプリンターの発展はありえません。
そこでここからはインクジェットプリンターに使われるインクについて解説します。
▶インクの進化
今日使われているインクは
・色インク
・染料系インク
・顔料系インク
・固体インク
の4つです。それでは下記にて解説します。
色インク
インクジェットプリンターによるカラー印刷は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色を混ぜ合わせて色相を作る「減法混色」という手法で行われます。
この3色の組み合わせで黒を生成することは理論的には可能ですが、豊かな黒を表現することは困難です。
そのため、通常はC+M+Y+Bkの4色で対応し、インクの消費量を増やしています。
また、機種によっては、シアンやマゼンタのインクを通常より細くして(約1/4〜1/6)、人肌などの繊細な色調の粒状感を抑える機能もあります。
さらに、特殊なプリンターでは例えば
・カラーパレットの幅を広げ、明るい色合いや輝きのある色を表示するための追加インクを搭載する
・普通紙に文字を印刷する際にインクがにじまないように、顔料インクと染料インクの両方をセットにした4倍インクや、顔料Bkインクのみを搭載。
など機種ごとの特徴はさまざまです。
染料系インク
染料系インクは印刷用紙に対して色素を染み込ませることで色をつけるインクです。
開発初期にインクジェットプリンターに採用されたインクですが現在でもインクジェットプリンター用のインクとして根強い人気があります。
その理由として下記のメリットが挙げられます。
・発色クリアーで色再現性が高い。
・光沢感が得られる。
・速乾性に優れている。
その一方で下記のようなデメリットも持ち合わせています。
・耐水性に優れていない :水にぬれやすく、染みこませた色がにじみやすい。
・耐光性に優れていない :直射日光に長時間当たると、色あせやすい。
・印刷後の色に変動(波)がある :色が定着して落ち着くまでは約1日要する。
ただし近年では改良が進んでおり、耐水性、耐光性については、インクの分子構造の工夫などにより以前より格段に耐久性に優れています。
顔料系インク
顔料系インクは、水分が蒸発した後にインクの顔料粒子が表面に付着することで、印刷用紙に色をつけるタイプのインクです。
・耐水性に優れている
・耐光性に優れている
・印刷後の色の変化が少ない
などのメリットがあり、反対に
・耐摩擦性が低い
・溶液が安定しない
・ノズルが詰まりやすい
・光沢がない
などのデメリットもあります。
以上のことから、家庭用プリンターでは、普通紙に印刷する際に文字がにじまないように、顔料系と染料系の墨を使い分けたり、顔料系のみを使用したりすることが多いです。
特に後者のタイプについては印刷後の色の安定が早く調整が容易なことから、プロ写真家向けのプリンターとして広く浸透しています。
固体インク
基本的には上述の3つのタイプのインクがポピュラーですが、中には固体インクを使用するプリンタもあります。
固体インクのプリンターの特徴としては
・染料系のインクを、常温時には固体のワックス樹脂を使用することで液体インクよりもにじみにくい。
・インクが減っても印刷品質に影響が少ない。
・トナーや液体インクを入れるカートリッジが不要なので、消耗品などのゴミが減らせる。
などの利点があります。
ただし用紙に転写するには、常に約60度の温度で液体化しておくことが必要です。そのため電源の切り替えが多いと、機械のウォームアップの際に一定量インクが捨てられるので結果として非効率的になってしまうリスクも持ち合わせています。
▶インクジェットプリンター用紙
染料系インクのインクジェットプリンターなどで普通紙を使用してプリントした場合、にじみが発生したり、インクが裏側まで染み抜ける「裏抜け」と呼ばれる現象が発生したりするケースもあります。
そのため各メーカーではにじみや裏抜けを防ぐために、「専用紙」を開発しています。専用紙にはコート紙や光沢紙などが使われます。
コート紙
コート紙とは、紙の表面にインクの吸収や付着を良くし、にじみを目立たなくするための層を塗布した紙のことです。主に印刷会社が提供する印刷物に使用され、一般的にはポリマー系や多孔質微粒子系の層が使用されます。
光沢紙
光沢紙は、コート紙に似ていて、画像を印刷するための白い部分が光っているのが特徴です。素材によっては、印画紙用の原紙(レジンコート紙と呼ばれる)や、表面に層を塗布したフィルムを指すこともあります。
この前者は「RCタイプ」、後者は「キャストタイプ」と呼ばれ、光沢を出すためにキャスト法(金属のきらめきを紙の上で再現する技術)を利用することが多いため、このように識別されます。
■まとめ
写真パネルの歴史と現在の技術について解説しました。
歴史を知り原点に立ち返ると、現在でも人が目を引くシーンと通ずるものがあるのではないでしょうか。
本記事の内容が、効果的な宣伝効果をもつ写真パネル製作のお役に立てれば幸いです。
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