印刷業界における剥離とは?

印刷業界における剥離(ふりがな:はくり、英:Delamination、仏:Délamination)とは、印刷面と基材(やフィルムなど)との間の接着が弱くなり、剥がれてしまう現象を指します。この現象は、印刷の品質や耐久性に大きな影響を与えるため、印刷業界では避けたい問題のひとつです。剥離はインクやコーティング剤の選定、接着方法の不備、湿度や温度などの環境要因が原因となることが多く、適切な対策が求められます。


剥離の概要

剥離は、印刷物の表面と基材が分離する現象で、印刷物の機能性や外観に悪影響を与えます。特に、パッケージ印刷ラミネート加工された製品において顕著に現れます。この現象は、以下のような要因で発生します。

  • 接着力の不足:印刷インクやコーティング剤が基材にしっかりと密着しない場合、剥離が起こりやすくなります。
  • 環境要因:湿度や温度の変化が大きいと、素材が収縮や膨張を起こし、接着力が弱まることがあります。
  • 基材の特性:プラスチックフィルムや金属箔など、表面が滑らかな素材はインクの密着が難しく、剥離のリスクが高くなります。
  • 加工工程の問題:ラミネートやコーティング処理時の温度や圧力の管理不足も剥離の原因となります。


剥離の歴史と由来

「剥離」という用語の由来は、日本語の「剥がれる」から来ており、古くから接着や塗装の分野で使用されてきました。印刷業界においてこの概念が注目されるようになったのは、近代的な包装技術が発展した20世紀中頃からです。特に、プラスチックフィルムや複合素材の普及に伴い、剥離現象が問題視されるようになりました。

1970年代から1980年代にかけて、食品包装や医療パッケージの需要が増加する中で、耐久性と品質の向上が求められました。この時期に、ラミネート技術や接着剤の研究が進み、剥離の原因を解明し、予防するための技術が確立されました。


現在の剥離の使われ方と対策

現代の印刷業界では、剥離を防ぐための様々な技術が導入されています。以下は、一般的な対策です:

  • 表面処理:コロナ処理やプラズマ処理などで基材表面を粗くし、インクや接着剤の密着性を向上させます。
  • 高品質な接着剤の使用:基材や用途に合わせた接着剤の選定が重要です。特に、湿度や温度変化に強い製品が求められます。
  • 加工条件の最適化:ラミネート加工時の温度、圧力、速度を適切に管理することで、剥離の発生を防ぎます。
  • インクと基材の相性確認:使用するインクの種類や濃度が基材に適しているかを事前にテストします。

さらに、最近では環境に配慮した水性インクや接着剤の開発が進んでおり、剥離のリスクを減らしながら、環境負荷の低減にも寄与しています。


剥離の利点と注意点

剥離現象を完全に防ぐことは難しいですが、その発生を抑えることで、以下のような利点があります:

  • 製品の信頼性向上:剥離が起こらないことで、長期間にわたって高品質な印刷物を維持できます。
  • 顧客満足度の向上:パッケージの見た目や耐久性が向上し、ブランドイメージの向上に貢献します。
  • 廃棄ロスの削減:剥離不良による廃棄を減らすことで、コスト削減と環境保護につながります。

一方、以下のような注意点も考慮する必要があります:

  • コストの増加:高性能な接着剤や表面処理技術はコストが高いため、予算に応じた対策が求められます。
  • 管理の手間:印刷工程全体での管理が必要となるため、専門知識と経験が重要です。
  • 環境への影響:一部の接着剤や処理方法は環境への影響が懸念されるため、持続可能な技術の採用が求められています。


まとめ

印刷業界における剥離は、製品の品質と耐久性に大きく関わる問題です。その歴史は包装技術の発展とともに進化し、現在では高品質な印刷物を提供するための重要な課題として捉えられています。適切な対策を講じることで、剥離を防ぎ、顧客満足度の向上や廃棄ロスの削減に寄与することができます。今後も環境に優しい技術の導入が進むことで、剥離問題の解決が期待されます。

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