印刷業界における見当とは?

印刷業界における見当(けんとう、Register / Repérage)とは、印刷物において各色のや要素を正確に位置合わせする技術や概念を指します。見当が合っている状態は、すべての色やデザイン要素が正確に重なり、ずれがない印刷物が仕上がることを意味します。この技術は多色刷りや高精度の印刷で特に重要で、印刷品質を左右する重要な要素です。


見当の歴史と背景

見当の概念は、木版画活版印刷が主流だった時代から存在していました。版画では、複数の版を重ねて多色印刷を行う際に、見当を合わせる技術が必要でした。日本の浮世絵などでは、見当合わせのために「見当墨」という印が用いられていました。

産業革命以降、印刷技術が機械化されると、見当を調整するための機構が印刷機に組み込まれるようになりました。特に20世紀初頭には、オフセット印刷輪転印刷の普及に伴い、高速で大量印刷を行う中でも見当精度を確保する技術が進化しました。現在ではデジタル技術が加わり、見当の調整がより精密かつ効率的に行われています。


見当の特徴と重要性

見当には以下のような特徴と重要性があります。

1. 多色印刷での色重ね: 見当が正確であることで、複数の色版が適切に重なり、鮮やかで美しい仕上がりが実現します。見当ズレがあると、色がにじんだり、ぼやけた印象を与える原因となります。

2. 高精度なデザイン再現: 写真やグラフィックデザインなど、精密な画像を印刷する際、見当の精度が仕上がり品質に大きく影響します。

3. 生産効率の向上: 正確な見当調整が行われることで、印刷工程中の修正回数が減り、生産効率が向上します。


見当を合わせる具体的な方法

見当を合わせる際には、以下の手法や技術が用いられます。

1. トンボ(トリムマーク)の活用: 印刷物の端に配置される目印を基に、各色版やデザイン要素の位置を調整します。

2. 見当合わせ装置: オフセット印刷機輪転印刷機には、見当ズレを自動的に検出・修正する機能が搭載されています。

3. デジタル技術: デジタル印刷では、プリンタ内部のセンサーがリアルタイムで見当を検出し、自動的に調整を行います。


印刷業界における見当の活用例

見当の技術は、以下のような印刷物で活用されています。

1. カラーカタログポスター: 鮮やかな多色印刷が求められる製品では、見当精度が品質に直結します。

2. 書籍や雑誌: テキストや写真が正確に配置され、読みやすい仕上がりを実現します。

3. ラベルやパッケージ: ブランドロゴやデザイン要素が正確に印刷されるため、製品の一貫性と視認性が保たれます。


現在の課題と未来の展望

見当にはいくつかの課題があります。

1. 高速印刷時のズレ: 高速で大量に印刷する場合、用紙の伸縮や機械の振動により見当ズレが発生しやすくなります。

2. 材料の特性: 紙の厚さや柔軟性、インクの特性によって、見当調整の難易度が変わる場合があります。

3. 熟練技術者の不足: 見当調整には経験が必要な場面もあり、熟練技術者の減少が課題となっています。

未来の見当技術は、AIやIoTの導入によってさらに進化することが期待されています。自動見当調整システムやリアルタイム検出技術の発展により、さらに高精度で効率的な印刷が可能になるでしょう。また、環境に配慮した材料や新しい印刷技術との融合により、持続可能な印刷プロセスの実現にも貢献することが予想されます。

▶印刷用語辞典TOPへ戻る



↑ページの上部へ戻る

ビジプリの印刷商品

ビジプリの関連サービス