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印刷業界におけるメタメリズムとは?

印刷業界におけるメタメリズム(めためりずむ、Metamerism / Métamérisme)とは、異なる光源下で同じように見える色が、光源が変わると異なって見える現象を指します。印刷物の色管理において特に重要な課題とされ、異なる素材やインクを使用する場合に問題となることがあります。この現象を理解し対処することは、印刷物の品質を一定に保つ上で欠かせません。


メタメリズムの歴史と由来

メタメリズムの概念は、19世紀に色彩学の研究が進む中で初めて科学的に説明されました。当時の研究では、異なる光源下での色の見え方の変化が、物体の物理特性と光のスペクトル分布に関連していることが明らかにされました。

印刷業界では、特に20世紀中頃に、色の正確な再現が求められる商業印刷の分野で注目されるようになりました。異なる素材(やインク)間で色の見え方が一致しない問題が多発し、この現象がメタメリズムとして特定されました。その後、カラーマネジメント技術の発展とともに、メタメリズムを制御する方法が研究されるようになりました。


メタメリズムの仕組みと影響

メタメリズムは、以下の要因によって引き起こされます。

1. 光源の違い: 色の見え方は光源のスペクトル分布に依存します。同じ物体でも、自然光、蛍光灯、LEDライトなど異なる光源下では色が変わる場合があります。

2. 素材の特性: インクや紙などの素材が異なるスペクトル反射特性を持つ場合、異なる光源下で色の一致が崩れることがあります。

3. 人間の視覚: 人間の目は、物体が反射する光のスペクトル分布を受けて色を感知しますが、同じ色と感じられる場合でも光源の変更によって異なって見えることがあります。

メタメリズムは、以下のような場面で印刷物に影響を及ぼします。

1. カラー一致の問題: ブランドロゴやパッケージデザインで、異なる光源下で色が一致しないと、品質問題に繋がります。

2. 異なる素材の調整: 同じデザインを異なる素材(例: 紙とプラスチック)に印刷する際、色が一致しない場合があります。


メタメリズムの対策

メタメリズムの影響を最小限に抑えるために、以下のような対策が取られます。

1. 標準光源の使用: 印刷物の色を確認する際、D50(デイライト)などの標準光源下で色を評価します。

2. スペクトルデータの活用: インクや素材のスペクトル反射特性を測定し、色再現を最適化します。

3. カラーマネジメントシステム: ICCプロファイルを活用し、異なるデバイス間での色の一致を図ります。

4. テスト印刷と確認: 異なる光源下での色の見え方を事前に確認し、必要に応じて調整を行います。


メタメリズムの使用例

メタメリズムは、以下の分野で特に重要視されています。

1. ブランドパッケージング: 商品のパッケージデザインで、複数の光源下で色が一致することが求められます。

2. ファッション業界: カタログポスターで、衣服の色が実物と一致するように再現する必要があります。

3. セキュリティ印刷: 銀行券や証明書の色の一致が重要な要素となる場合、メタメリズムの影響を抑える対策が講じられます。


メタメリズムの課題と未来展望

メタメリズムの課題として、色再現技術が高度化する一方で、異なる素材や環境条件が複雑化し、完全な一致を達成することが難しい点があります。また、標準光源に依存する評価基準の統一も課題の一つです。

しかし、測色技術やAIを活用したカラーマネジメントシステムの進化により、メタメリズムの制御が一層容易になることが期待されています。また、持続可能な素材やインクの開発が進む中で、環境に配慮した色管理が求められる時代において、メタメリズムの制御はますます重要な課題となるでしょう。

メタメリズムの理解と対策は、印刷業界における品質向上と顧客満足度の向上に直結します。これからも、色再現技術の進化とともに、その重要性が増していくでしょう。

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