印刷業界における抄紙機とは?
印刷業界における抄紙機(しょうしき、Papermaking Machine / Machine à papier)とは、パルプから紙を作るための機械を指します。抄紙機は、パルプを水と混ぜて薄いシート状に広げ、乾燥させて紙に仕上げる一連のプロセスを自動化する装置です。紙の厚さや質感、サイズを調整できるため、印刷用紙をはじめ、包装紙やティッシュペーパーなど多岐にわたる用途の紙製品を生産する際に使用されます。
抄紙機の歴史と言葉の由来
抄紙機の起源は、18世紀末から19世紀初頭にかけての産業革命期に遡ります。1799年、フランスのニコラ=ルイ・ロベールが初めて連続して紙を製造する装置を発明しました。この装置は後に改良され、1807年にイギリスのフォードリニエ兄弟によって「フォードリニア抄紙機」として実用化されました。
日本では、明治時代に抄紙機が導入され、従来の手漉き紙製造から機械化へと移行しました。「抄紙」という言葉は、漢字の「抄」が「すくう」や「薄くする」という意味を持ち、紙を薄く広げる製造工程を指します。この言葉が機械の名称にも使われています。
抄紙機の構造と動作原理
抄紙機は、以下の主要な工程を含む複雑な構造を持っています。
1. ストック調製: パルプを水で希釈し、繊維を均一に分散させます。この混合液は「ストック」と呼ばれます。
2. 成形部: ストックをワイヤーパートと呼ばれる金属やプラスチック製の網に流し込みます。水分が除去され、繊維が絡み合って薄いシート状のウェットペーパーが形成されます。
3. プレス部: ウェットペーパーをローラーで圧縮し、さらに水分を除去します。これにより、紙の密度と強度が増します。
4. 乾燥部: ドライヤーシリンダーを使用して紙を加熱し、残留水分を蒸発させます。ここで紙が最終的な厚さと硬さを得ます。
5. 巻取部: 乾燥した紙をロール状に巻き取ります。このロールは後工程で裁断され、用途に応じたサイズに加工されます。
抄紙機の種類
抄紙機には、用途や製造する紙の種類に応じてさまざまな種類があります。
1. フォードリニア抄紙機: 最も一般的な抄紙機で、薄く均一な紙を大量に生産するのに適しています。
2. 円網抄紙機: 厚手の紙や板紙の製造に適しており、段ボールの芯材などに使用されます。
3. モールド抄紙機: 特殊な形状や模様を持つ紙の製造に使用されます。装飾用紙や高級紙の生産に適しています。
抄紙機の使用例
抄紙機は以下の分野で広く利用されています。
1. 印刷用紙: オフセット印刷やデジタル印刷用のコート紙や上質紙を生産します。
2. 包装紙: クラフト紙やパラフィン紙など、商品の包装に使用される紙を製造します。
3. 機能性紙: 耐水性や耐油性などの特殊な特性を持つ紙を生産します。
4. ティッシュペーパーやトイレットペーパー: 柔らかく吸収性の高い紙の大量生産に用いられます。
抄紙機の課題と未来
抄紙機の使用には以下のような課題があります。
1. エネルギー消費: 抄紙機は膨大なエネルギーを消費するため、コスト削減と環境保護の観点から効率化が求められています。
2. 水資源の利用: 紙の製造には大量の水が必要であり、使用後の水の処理も課題となっています。
3. 環境負荷: パルプの製造や紙の漂白工程における化学物質の使用が環境に与える影響が懸念されています。
未来においては、エネルギー効率の向上やリサイクル技術の進化が進むことで、抄紙機の環境負荷が軽減されると期待されています。また、バイオマス資源を利用した持続可能な紙製造や、省エネ型の新しい抄紙機の開発が進むことで、紙産業全体の発展がさらに促進されるでしょう。