印刷業界における横目とは?
印刷業界における横目(ふりがな:よこめ、英:Grain Direction Crosswise、仏:Fibre Transversale)とは、用紙の繊維の方向が短辺に沿って配置されている状態を指します。紙の繊維方向は、印刷や製本の際に影響を及ぼすため、適切に理解することが重要です。特に、製本や折り加工の際、横目の用紙を使用すると、折り目が割れやすくなるため、注意が必要です。紙の特性を活かすために、印刷物の用途に応じた目の選定が求められます。
横目の概要
「横目」とは、紙の製造過程で繊維が用紙の短辺に対して平行に配置される状態を意味します。紙は繊維が絡み合って作られており、その方向性(目)は製造時の抄紙機の動きによって決まります。横目の紙は、繊維が短辺に沿って走っているため、短辺方向に対しては比較的硬く、長辺方向に対しては柔軟性がある特性を持ちます。
この繊維方向は、印刷、折り加工、製本などの工程に影響を与えます。たとえば、折り加工の際に横目の紙を使用すると、折り目に沿って紙が割れやすくなります。そのため、折りやすさや仕上がりの美しさを考慮して、適切な目を選ぶことが重要です。
横目の歴史と由来
紙の繊維方向の概念は、紙が手作業で作られていた時代から存在していました。特に和紙の製造においては、繊維の方向が用紙の品質に大きな影響を与えることが知られていました。近代的な抄紙技術が19世紀に登場すると、紙の大量生産が可能になり、目の方向を管理する技術も発展しました。
日本では、古くから「縦目」と「横目」の区別があり、用途に応じて使い分けられてきました。特に製本技術が進化する中で、横目の特性を活かした加工方法が考案されましたが、製本の際に折り目が割れやすいという課題もありました。このため、横目の紙を使用する際には、加工時に特別な注意が払われています。
横目の現在の使われ方
現在の印刷業界では、横目の紙は以下のような用途で利用されています:
- ポスターやチラシ:大きな用紙を使用する印刷物では、横目の紙を用いることで、用紙の反りを抑えることができます。
- 製本:横目の紙は、製本の際にページが自然に開きやすい特性を持つため、一部の書籍やパンフレットに使用されます。
- パッケージング:箱の製造では、横目の紙を使用することで、強度を高めることが可能です。
- 折り加工:ただし、折り目が割れやすいため、横目の紙を使用する際は事前にスコアリング(筋入れ)が必要です。
横目の紙は、デジタル印刷やオフセット印刷の両方で利用されており、印刷物の用途やデザインに応じて適切に選定されます。特に、長期間保存する書籍やカタログでは、横目の特性を活かして製本されることが多いです。
横目の利点と注意点
横目の紙を使用することには、以下のような利点があります:
- 紙の反り防止:横目の紙は、長辺に沿った反りが発生しにくいため、大判印刷物に適しています。
- 自然な開きやすさ:製本において、ページが自然に開くため、閲覧性が向上します。
- 強度の向上:箱やパッケージでは、横目の紙が強度を高めるために使用されます。
一方、以下の点に注意が必要です:
- 折り加工での割れ:横目の紙は、折り加工時に繊維が割れることがあるため、スコアリングが推奨されます。
- 印刷精度の影響:繊維の方向によりインクの吸収性が異なるため、色ムラが発生することがあります。
- 製本の制約:製本時にページが外れやすくなる場合があり、接着剤の選定が重要です。
まとめ
横目は、印刷物の品質や耐久性に大きな影響を与える重要な要素です。特に製本や折り加工の際には、横目の特性を理解して適切に活用することが求められます。紙の選定においては、印刷物の用途や加工方法に応じて、縦目と横目の特性を使い分けることが、最適な仕上がりを実現するための鍵となります。今後も印刷業界では、より効果的な紙の利用方法が研究され、さらに進化していくことでしょう。